ボウソウ
まるで一人ぼっちの映画館。
上映されているのは菅野と戦う俺の視点。俺は菅野の攻撃をアクロバティックに避け続けている。俺は今までこんな動きをしたことはない。
只、ボーッと眺める事しか出来ない。
「ナツキ!!おい、聞こえてるか??」
菅野は俺に向かって声をかけるが、いくら返事をしても菅野にそれが届くことは無かった。
自分が怖くなる。このまま俺の意識は掻き消されてしまうのではないかと不安が積もる。
「おい本田、手伝え!止めるぞ!」
菅野が本田に向かって声を荒げる。
「ふむ。これは異常事態だな。仕方があるまい。」
本田は警棒を構えると、俺に向かって走り始めた。
しかし、二人になっても事態は変わらなかった。俺は二人の攻撃を避け続ける事が出来た。囲まれても一瞬で距離を取って再び避け始める。
「はぁ…はぁ…くそっ!まるっきり呑まれてやがる。こりゃあ失敗だ…。俺たちで何とか出来るか…?」
菅野は息を切らせながら本田に声をかける。まるで100メートルを全力疾走した後のような息遣いだ。
「ふぅ…。すまないが私では小鳥ちゃんの動きを捉える事は出来そうにないのだよ。」
普段の本田ではあり得ない発言だ。いつもなら自信満々に振る舞いをしそうなものだが…?
「…そういえばお前、つくしの動きが苦手だったな。組み手ではいつもボコボコにされてたっけか。」
「あの小鳥ちゃんの動きはいつも私の予想の上を行くのだよ。決して勝てない訳では無いがな。」
「わかったわかった。じゃあその勢いで耐えててくれよ。」
菅野は溜め息を吐きながらそう言った。すると本田はまたもや珍しい反応を見せる。
「ま、待て!私一人では…いやっ!ちょっ!!」
かなり焦った様子の本田を横目に菅野は部屋の隅へと走り出した。
俺は本田へと走り出すと、短く折れた右手の竹刀を降り始める。
本田はやっとの思いでそれを受け流し続ける。




