ヘンリン
折れた竹刀の先は俺の右斜め前を飛んでいる。この先を読もうとするが、いくら考察を重ねても答えは“負け”しかなかった。
菅野は両手のトンファーを回転させながら俺の懐に振り始める。
考えるよりも先に俺の体は動いていた。
俺は空中に漂う折れた竹刀を右手で捕らえ、両手で菅野の攻撃を受け止める。
すさまじい衝撃だ。両手が衝撃でビリビリと痺れる。この衝撃は中国戦で雪に受けた攻撃を思い出させる。
この人は本気で俺に攻撃をしている。これは教育なのか?それとも何か恨みでもあるのだろうか?そんなことさえ覚える程の衝撃だった。
攻撃を防いだ俺を見て菅野は驚いた表情を見せた。だがすぐに唇をギュッと噛んで気を引き締めると、再び攻撃体制を取る。
痺れた手で次の攻撃を受け止めるのは無理だ。
俺の両手には半分に折れた竹刀。額から汗が流れるのがわかる。時間がゆっくりと流れている。研ぎ澄まされた感覚。指一本一本の感覚がわかる。
選択肢は一つしかない。
菅野は右手のトンファーを俺の鳩尾に向かって振りだした。菅野と目が合う。
ガキッ
しかし、菅野のトンファーが捉えたのは俺の体では無かった。
「っ!?」
菅野は目を見開いて驚く。
俺の体は宙に浮いている。右手の竹刀でトンファーの攻撃を弾いた俺は、その力を反動に側宙している。
世界が反転する。まるでこの空間だけが無重力空間になったのだろうか。頭の理解が追い付かないが、段々と俺の意識が薄れているせいでそれ以上考える事が出来ない。
そして着地した俺は素早く菅野との距離を取った。
「…インストールが終わったのか?その動きは…」
菅野はこちらを見ながらブツブツと何かを呟いている。
なんだろう。
…よくわからん。今はこの感覚に身を任せるしか出来んからなぁ…
既に俺の体は自分自身でのコントロールは出来なかった。




