ヒミツ
俺はさらっと花澤に尋ねた。
「花澤先輩はいつからこの隊に入ったんですか?お若いですよね?」
「先輩やて、うふふっ。…そうやなぁ。うちは22歳の頃からだから……もう3年になるのか。改めて考えるとあっという間やったなぁ。」
花澤は物思いに更ける。その遠くを見つめる仕草からは哀愁が伝わる。3年前からここに所属しているならば、例の法案が成立したのと時期が被る。つまり初期メンバーの可能性が高いということだ。
「なるほど、その頃からこのチームに所属していたんですね。…というか25歳には見えないですね。あ、ところで第二小隊の役回りって何を主に行うんですか?ちなみに、俺の姉はどこの部隊に所属していたんですか?」
わざと続けて質問をする。単体での質問はかえって警戒される気がしたからだ。しかし、そんな俺の策も虚しく、花澤は明らかな動揺を見せる。
「そ、そやなぁ。第二小隊は別名“第二攻撃部隊”って言われてるの。戦況を見ながら敵の防御が薄い所に攻撃をしかける、みたいな役回りやね。第一小隊が攻めきれない時はうちらが頑張らなきゃいけないからね!」
姉の事に関しては全く触れられなかった。まるであえてその話題は避けているような、そんな感じだった。弟の俺に隠さなきゃいけないことがあるのだろうか。ますます疑念が深まる。
多分この人は隠し事をするのが下手なタイプだ。上手くやれば聞き出せるかもしれない。
「さっき姉のこと、知ってるって言ってましたよね?姉はみなさんの前ではどんな感じでしたか?」
俺はこの質問に絞った。これなら逃げられないだろう。なにせ花澤は先程自らハルカの名前を口に出しているのだ。
「…あ、あはは。そ、そやね……。えっと…」
花澤は絵にかいたような苦笑いを見せた。少し可哀想な気もするが、俺の目的の為ならいた仕方ない犠牲だ。
「つくしちゃん…ダメ。」
その時、今まで黙っていた月島が口を開いた。俺はいきなりの横槍につい月島を睨んでしまった。月島は無表情のままこちらを見つめる。
「団長に…言われてるから。あなたのお姉さんのことは…あなたには話さない。」
月島は淡々と言葉を羅列する。まるで命令を遂行するロボットのようだ。
「…そういうことですか。その文だと、理由も教えてくれそうにないですね。なら結構です。自分で調べますから。」
見え透いた詮索をしてしまった。焦っていたのは俺自身だった。やはりこのチームが姉の事を俺に隠しているのは間違いないようだ。
俺は興奮しないよう、自制心を保った。月島の言葉には沢山の情報が含まれている。それが知れただけでも充分だ。
「そういう訳なんや。ごめんね…ナツキ。…あっ!!そ、そや!後で施設案内するよ!だから…ね?」
花澤は寂しそうに俺を見る。それに応える為に俺はもう一度息を整える。
「はい。是非お願いします、先輩。」
俺は表情を緩めて花澤を見る。なんにせよ、この人は悪い人ではない。今はこのチームに慣れることも必要だ。
「うん!任せて!」
花澤の表情はパッと明るくなり、月島と目を合わせる。それに呼応して月島は表情を緩めた。




