ケッチャク
俺は攻撃を繰り出しながら期を伺う。本田がカウンターを放つ瞬間を待っているのだ。
しかし、それを俺が狙っている事を本田はわかっているようで、中々カウンターをしてこない。
風間の戦い方も先読みからのカウンターが定石だ。つまり、互いにカウンター同士の戦い。先に動いた方が不利なのだ。
俺は一度距離を取り、時間を作る。
どうする?このままじゃ決着がつかない。それなら…
俺は再び本田に向かって走り始めた。
そして竹刀を本田の胸に向かって素早く突き出す。すると本田は俺の竹刀を包み込むように警棒で横に逸らせた。
スピードが乗っている状態で攻撃を流された俺は、勢い余って前のめりにバランスを崩した。
本田はその瞬間を見逃さなかった。体を沈め、警棒を俺の足に向かって振るう。完全に転ばせる事が目的だろう。
だが俺はその一連の動きを読んでいた。自らバランスを崩せば必ず本田は動く。わかっているならば避けるのは容易い。
俺はそのまま前宙をして足下の攻撃を避けると、着地と同時に竹刀を本田の首元に突き付けた。
本田と目が合い、時間が止まる。
…俺の完全勝利だ。
そう思った瞬間、緊張の糸はプツリと切れ、表情が緩んだ。
「いやー、お見事だね!やったな、ナツキ!」
菅野は手を叩いて歓声をあげる。自分でも何故かわからないが、風間の動きが自然に出来た。やはり毎日風間と組み手をしていたからだろうか。俺は自分の手の平を見つめる。
「ま、まだ私は負けていないのだよ。勝手に止めないでくれたまえ!」
勝利の余韻に横槍を入れる本田の発言に、菅野は明らかな嫌悪感を表情に出した。
「お前な…。後輩が頑張ったんだから少しは認めてやれよ。それにな、今のは流石にお前の負けだろ?横で見てた俺が言うんだから文句は言わせないぞ?」
「いや、私はあそこから逆転の一手を持っていたのだ。新人君が攻撃を直前で止めなければ勝っていたのは私なのだよ。」
本田の言い訳に、菅野は項垂れる。これ以上言っても無駄なのは菅野が一番わかっているだろう。
だが俺はそんなことはどうでもよかった。
今回の本田との手合わせで何かが見えた気がしたんだ。
俺はこの先読みの力をもっと上手く使えるようにならなくてはいけない。
風間さんから貰った大切な力なのだから…。




