キンク
菅野の部屋の前に辿り着くと、本田はノックをせずにドアノブに手を掛け、勢い良く開けた。
「菅野よ!私も共に行くぞ!準備は出来ているのか?」
本田は玄関で大声をあげる。
すると廊下の奥のリビングから菅野が急いで出てきた。
「は?なんで居んだよ!?お前はもう第三小隊じゃないだろ?」
「はっはっはっ!!私に小隊の違いなど関係ない!君たちにこの私の美技を教授してやろうと思ったのだ。」
本田は得意気に笑っているが、菅野は目を細めてジッと本田を見る。そして何かを悟ったような表情でゆっくりと3回頷いた。
「ははーん。さてはお前、第五小隊にうまく馴染めなくて逃げてきたな?」
「なっ!?ば、馬鹿な事を言うなっ!!この私がそんな事になる訳がなかろう!!」
わかりやすいリアクショクだ。誰がどうみてもバレバレの反応に俺は苦笑いをする。
「と、とにかくトレーニングルームに行くのだよ!」
本田は焦りながら部屋を出た。その姿に俺と菅野は目を合わせて笑った。
トレーニングルームの奥にある畳部屋に着くと、本田は柔軟体操をしながら俺に声をかけてきた。
「君のお姉さんとは何度か手合わせをしたことがあるが結局決着がつくことはなかったのだ。弟である君の実力をお姉さんのライバルであるこの私が直々に見てやろう。さあ、好きな武器を取りたまえ。」
すると本田の言葉に菅野はため息をつきながら口を開いた。
「はぁ…。ハルカの事はナツキには言っちゃいけないって団長に言われてるだろうが。言うにしても、もう少し周りを見てから話せよ。もし他に誰か居たらどうすんだ?」
すると本田は口をパクパクとさせながら目を見開いて答えた。
「し、しまった。俺としたことが…。団長殿との約束を忘れるとは……不覚だ。」
菅野は再びため息をついた。
それはそうとして、本当に本田は姉さんのライバルだったのだろうか?中国戦の時はとてもそうは見えなかったが、もしそうだとすれば俺にとってこれ以上ない程のトレーニングになる。
俺は期待に目を光らせる。
そんな俺の姿に菅野は何かを察したらしく、俺の耳元で呟いた。
「あいつも俺と一緒で対人戦はからっきしなんだ。ハルカと手合わせした時もあいつは敗けを認めなかっただけで、一方的にやられっぱなしだったんだ。だから、あんまり期待しない方がいい。」
その言葉に俺はガッカリと肩を落とした。




