ヨソウガイ
体から太陽の匂いがする。ポカポカに暖まった体はいつもよりも動きが軽快な気がする。菅野の部屋は確か303号室。菅野は先ほど俺の部屋に来たときはまだ寝起きの顔だったが…大丈夫だろうか?
「やあ!ナツキ君じゃないか。はっはっは!おはよう!今日は珍しく一人なのかい?」
突然俺に向けてかけられた言葉に目線を上げると、そこには本田の姿があった。
この馬鹿……いや、誇り高き先輩はいつ会ってもこんな調子だ。基本的には一人の時はあまり相手にしない。
「あ…、一人っすね。じゃあ俺、行くとこあるんで失礼しますね。」
誇り高き先輩に対してこの素っ気ない対応。普通の先輩ならブチギレても可笑しくないが、この人は問題ない。なに、見ていればわかる。
「はっはっはっ!!そうかそうか、一人なんだな。どうだい?これからこの私と一緒に射撃トレーニングでもいかがかな?」
本田は眉をクイっと上げて得意気な表情をする。
「あ、大丈夫っす。これから菅野さんと対人格闘のトレーニングなんで。」
更に続けて冷たくあしらうが、本田には全く効果が見られない。
俺は今までこの人程話が通じない人間を見たことがない。…まあ、悪い人ではないんだけど。
「はっはっはっ!ならばこの私もそのトレーニングに手を貸してやろう!」
予想外の発展だった。いつもならここで話は終わる筈なのに。
「えっ!?いいっすよ、菅野さんが居れば大丈夫っすから。」
「はっはっはっ!なに、遠慮することはない。この私が直々に手を貸すと言っているのだ。君が気を病む事ではないさ。」
そういう訳ではないんだ。…どうやらこの人に空気を読むという機能はついていないらしい。
俺は大きくため息をついた。多分これ以上何を言っても無駄だろう。何を言っても本田は俺についてくるに違いない。
本田は満足そうな表情で菅野の部屋に歩き始めていた。




