カゲ
「まぁ、あんまり考え過ぎるな。真実はいずれ君も知ることになる。そういう運命を俺は君に感じるんだ。」
高橋はそう言ってニコりと笑った。なんの根拠もない言葉だったが、何故かこの言葉は嘘とは思えなかった。俺は目線を上げ、高橋と目を合わせた。
「さぁ、まだ俺の朝のトレーニングは終わってないんだ!ナツキ君も一緒にどうだい?」
高橋は屈伸をしはじめる。あそこまでエアロバイクで追い込んでおいてまだやると言うのか?この人はどれだけストイックなのだろうか。
人見知りな俺でも心が許せる高橋の人柄。この人は悪い人間ではない。むしろ俺の味方として見てもいいかもしれない。
そう思うと自然と表情の筋肉が緩んだ。
「やるっす!体力不足は前回の戦いで学びましたから。」
「よし、それじゃあまずはエアロバイクを30分間だ。」
「ぇぇっ!?長くないですか?」
「はい、泣き言言わない。やると言った以上妥協は許さないよ?」
「うすっ!!」
その後、高橋との朝のトレーニングは9時過ぎまで続いた。続々と他のメンバーがトレーニングルームに来る頃には、俺と高橋はヘトヘトになっていた。まるで体が燃え尽きてスカスカになった木炭のように感じる。
「よし…今日はここまでだ。あとはゆっくり筋肉を休めよう…。」
高橋はそう言ってフラフラと歩き始める。
「ありがとうございましたっ…」
高橋はそのまま自分の部屋に戻っていった。
ここで俺は思い出した。
これから独房へ朝食を持っていかなきゃいけない。確か竜胆はヨーグルトを……
ガチャ…ガタン
高橋はタオルで汗を拭いながら自らの部屋に入った。
「…どうだ?」
暗い部屋から高橋に向けて何者からか声がかけられる。
「ああ、ちゃんと指示通りに伝えたよ。」
高橋が部屋の電気をつけると、そこには日向の姿があった。
「それにしても…本当にナツキはハルカの能力を持ってんのかね?」
高橋は汗が染み込んだシャツを脱ぎながら日向にそう言った。
「それを確かめる為にお前に頼んだんだ。正直、今時点ではそれはわからねぇ。もし、このままアイツに能力の兆候が見られないならここに置いておく必要もないからな…。」
「ふーん。」
高橋はさして興味がなさそうに返事をする。
「よし。これで準備は整った。午後から隊長ミーティングを行う。義正、全員集められるか?」
「愚問だな。お前の指示で集まらない隊長たちじゃないだろ?」
高橋がそう答えると、日向は少し笑った。




