シンソウノトビラ
「戦闘は均衡状態が続いていて動きが無かったんだ。そんな中、俺の元に無線が届いたのは陽が傾きかけた頃。突然鳴ったその無線からは、取り乱して叫ぶ花澤の声が聞こえたんだ…。」
高橋は目を細めながら眉間にシワを寄せ、沈黙する。その姿は思い出すのが辛そうな表情に見えた。俺は黙って高橋が話を続けるのを待った。
「…俺は花澤を宥めて状況の説明を求めたんだ。何を言っているのか聞き取るのが困難な程花澤は取り乱してたからね。すると花澤はその時こう言ったんだ。」
『…ぁ…副団長…ハルカちゃんが……。ハルカちゃんが死んでもた…。…竜胆さんと団長が…なんで…、何でなん!?駄目や。イヤヤ…美咲ちゃん…助けて…』
「…俺が聞き取れたのはこの言葉ぐらいだった。すぐに無線は切れてしまって、そのあと何度も花澤に無線を飛ばしても返事は返ってこなかったんだ。」
「…つくし先輩はそこに居たんですね。それよりも気になるのは何で日向団長がその場に居たかっす…。」
「日向はその無線が入る数分前に花怜と共に前線に向かったらしい…。理由は俺には教えて貰えなかったが、あいつはチームの指揮を任せると言って突然消えたんだ。…俺が知っているのはここまでだ。」
「ありがとうございます…。」
聞いて良かったのか悪かったのか…。花澤とは昨日の夜に話をしたばかりだ。確かに花澤に聞くのが一番早いかもしれない。しかし、高橋の話を聞く限り、それに相応しい人物が花澤以外に居る。
先ほどの文面を聞く限り、花澤は竜胆の親父さんと日向に対して “何でなん!?” と疑問を投げている。
日向は何故姉さんの元へ向かったのだろうか?疑念が渦巻いて俺の心臓に絡み付く。勝手な想像とはわかっていても落ち着いてられない。
ならば質問をぶつけるべき相手は一人だ。
団長である日向、この人しかいない。
俺は震える拳をなんとか抑える。もしも日向が姉さんの死の原因と考えると、メンバーや俺に姉の死の真相を隠している事にも説明がつく。そうだとすれば俺は…彼を許せない。
だが、例え直接日向にその件について問えたとしても彼は簡単には答えてくれないだろう。それは今までの日向を見ていればわかる。
何かいい手はないだろうか…?
俺は頭を抱えた。




