ツナガリ
風間は気まずそうに皆の前に立った。
「と、言われてもね…。実際、今回人数減ったのは飯倉の第一小隊と私の第二小隊だからね。そこに補充でいいのでは?」
風間は腕を組ながら首をかしげる。俺にはどういう隊構成になっているのかわからないが質問出来る雰囲気でもない。とりあえず表情に出さずに頷いておくことにする。
「飯倉隊長は竜胆君をご指名でいいんだね?」
風間の問いかけに、先程の眼鏡の男は頷くと、笑みを浮かべながら竜胆を見た。竜胆はさして興味がなさそうに目線を外している。
「じゃあ、竜胆君は第一小隊で決まりだね。」
風間はテンポ良く話を進めていく。
「おい!よかったな竜胆。てめぇはめでたく俺たち“死にたがり隊”に配属だ。俺は隊長の飯倉純太。いいか?第一小隊の主な役回りは攻撃だ。ぼーっとしてたらすぐ死ぬから覚悟しとけよ。」
飯倉はそう言ってヘラヘラとあざけ笑う。すると竜胆は飯倉をキッと睨み付けながら口を開いた。
「はっ!望むところだね。俺はそう簡単には死なねえよ。」
竜胆は飯倉の言葉に噛みついた。明らかに先程のつまらなそうな表情から変わっている。どうやらやる気はあるらしい。
「それじゃあ竜胆君は第一小隊に任せますので。それ以外の方々は自由にしててくださいね。私はこっちをどうにかしますので。」
風間はパンと一発手を叩くと、そう言って俺の背中を押した。そして俺は風間が先程まで座っていた席に案内される。
隣に座っている女は明らかに胸を踊らせながらとこちらを見てくる。さっきの女だ。目を合わせたくない。
「君は第二小隊だよ、鳥海ナツキ君。察しはついてると思うけど、私が隊長の風間潤だ。ほら、二人とも自己紹介するんだ!」
「はいはーい!うちは花澤つくしいいます。わからない事があったら、何でもうちに聞いてね!」
隣に座る女は興奮した面持ちで答えた。そして俺の肩をバシバシと叩いてくる。なんなんだ、この女は。
「月島美咲…です。よろしく…。」
辛うじて聞き取れるぐらいの声で花澤の奥に座るもう一人の女は続けた。歳は俺よりも少し上ぐらいだろうか?こちらを見ているのだが、その表情には喜怒哀楽がなく、なにを考えてるかわからない。黒い瞳はどこか不思議な雰囲気を醸し出している。
「…この4人で小隊なんですか?」
俺は少し不安になった。何せ半分が女性なのだ。しかも双方共華奢で、どこにでも居る普通の女の子に見える。
「ああ、大丈夫だ。君の心配には及ばないよ。何せ二人とも…」
「風間さん~。ちょっといいっすか?」
風間の話を中断させたのは日向だった。日向はヒラヒラと風間に手招きをする。
「すまない、後のことはつくしに聞いてくれ。つくし、今日からお前がナツキ君の教育係だ。他のメンバーの事とか、ここでの決まりとか、彼がわからないことは教えてあげなさい。」
風間は急ぎそう伝えると、日向の元へ行ってしまった。直後、花澤は子どものようにはしゃぐ。
「うちが教育係やて。ふふっ。年下の後輩出来るの初めてやから、すっごい嬉しい。うちに任せて、わからんことはちゃんと教えてあげるから。」
花澤の素直な言葉に少し俺は照れた。自分の気持ちを率直に表現出来る人間は実は少ない。大抵は少しの背伸びが含まれるものだ。少し心配な気はするが、彼女は悪い人ではないのだろうと直感的に感じた。俺はそれを信じて先程の疑問に少しだけ踏み込んでみる事にした。




