リンドウノイシ
「何でそんなに強くなりたいんだ…?自分の力を見せつけたいからか?…それとも快楽殺人か?」
俺は続けて竜胆に訊ねた。ここまで聞いたならもっとこいつのことが知りたくなってきた。それに、もしかしたら姉の真相に繋がる情報が得られるかもしれない。なにせ竜胆の父親は俺の姉の死に関係しているのだから…。
「…前者に近からず遠からずと言った所だな。俺はもっと強くなって証明しなくちゃいけねぇんだ。」
薄暗い明かりを見つめながら竜胆は答えた。そしてパンを一口頬張り、モグモグと口を動かし始めた。
「…何を証明するんだ?」
話の雲行きが変わった。俺は何故か心臓の鼓動が速くなる。すると竜胆は口の中のパンを飲み込み、ゆっくりと口を開いた。
「…食事係の礼に教えてやるよ。実は俺の親父も日本の代表としてこのチームに所属してたんだ。だが中々実績が思わしく無かったらしくてな。親父は世界から馬鹿にされてたんだ。それどこか日本チーム関係者からも散々な言われようだったらしい。そして親父は全く実力を認められる事無く死んだんだ。」
竜胆は目を瞑って俯く。
「俺は…代表として死んだ親父のことを誇りに思っている。と同時に情けないとも思ってんだ。死んじまったら何も残らねぇ。周りに馬鹿にされたまま死んじまったら何も意味がねぇんだ…。だから俺は親父の為に強くならなきゃいけねぇんだ。」
真剣な表情で答えた。竜胆にも理由はあった。ちゃんと戦う理由が…。だが俺が聞きたいのはそこではない。
「何で親父さんは死んだんだ?」
核心に触れる質問。かなりナイーブな話題だが、聞くなら今しかない。
「…いや、それはわからねぇ。飯倉も松本もそれについては教えてくれねぇんだ。ま、さして興味はないけどな。」
竜胆は俺の目を見ながら答える。この言い方から察するに、こいつは本当に知らないらしい。俺は急に虚しくなる。自分の知りたい情報が得られないとわかった途端、どうでもよくなってきた。
「そうか…。ならいい。」
俺は竜胆に背を向けると、出口に向かってあるき始めた。珍しく話をしてくれた竜胆だったが、仲良く出来るとは未だに思えない。こんなことで今までのこいつの行動が許される訳でもなかろう。
「明日の朝はヨーグルト食べたいぜっ!!おい、鳥海、頼んだぞ?」
竜胆は馴れ馴れしく俺にそう叫んだ。俺は黙って手を挙げて返事をすると、そのまま独房を後にした。
姉さんが自分でミスを犯す訳がない。きっと竜胆の親父さんが何かを仕出かしたに決まってる。
この勝手な推測は既に俺の頭の中で確信へと変わっていた。
薄暗い廊下で俺は拳を握り締める。
「なんや、時間かかったなぁ。」
その声に俺はハッと我に帰る。
花澤は壁にもたれ掛かりながら俺を見ている。
…全然気が付かなかった。




