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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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リンドウノイシ

「何でそんなに強くなりたいんだ…?自分の力を見せつけたいからか?…それとも快楽殺人か?」


俺は続けて竜胆に訊ねた。ここまで聞いたならもっとこいつのことが知りたくなってきた。それに、もしかしたら姉の真相に繋がる情報が得られるかもしれない。なにせ竜胆の父親は俺の姉の死に関係しているのだから…。


「…前者に近からず遠からずと言った所だな。俺はもっと強くなって証明しなくちゃいけねぇんだ。」


薄暗い明かりを見つめながら竜胆は答えた。そしてパンを一口頬張り、モグモグと口を動かし始めた。


「…何を証明するんだ?」


話の雲行きが変わった。俺は何故か心臓の鼓動が速くなる。すると竜胆は口の中のパンを飲み込み、ゆっくりと口を開いた。


「…食事係の礼に教えてやるよ。実は俺の親父も日本の代表としてこのチームに所属してたんだ。だが中々実績が思わしく無かったらしくてな。親父は世界から馬鹿にされてたんだ。それどこか日本チーム関係者からも散々な言われようだったらしい。そして親父は全く実力を認められる事無く死んだんだ。」


竜胆は目を瞑って俯く。


「俺は…代表として死んだ親父のことを誇りに思っている。と同時に情けないとも思ってんだ。死んじまったら何も残らねぇ。周りに馬鹿にされたまま死んじまったら何も意味がねぇんだ…。だから俺は親父の為に強くならなきゃいけねぇんだ。」


真剣な表情で答えた。竜胆にも理由はあった。ちゃんと戦う理由が…。だが俺が聞きたいのはそこではない。


「何で親父さんは死んだんだ?」


核心に触れる質問。かなりナイーブな話題だが、聞くなら今しかない。


「…いや、それはわからねぇ。飯倉も松本もそれについては教えてくれねぇんだ。ま、さして興味はないけどな。」


竜胆は俺の目を見ながら答える。この言い方から察するに、こいつは本当に知らないらしい。俺は急に虚しくなる。自分の知りたい情報が得られないとわかった途端、どうでもよくなってきた。


「そうか…。ならいい。」


俺は竜胆に背を向けると、出口に向かってあるき始めた。珍しく話をしてくれた竜胆だったが、仲良く出来るとは未だに思えない。こんなことで今までのこいつの行動が許される訳でもなかろう。


「明日の朝はヨーグルト食べたいぜっ!!おい、鳥海、頼んだぞ?」


竜胆は馴れ馴れしく俺にそう叫んだ。俺は黙って手を挙げて返事をすると、そのまま独房を後にした。


姉さんが自分でミスを犯す訳がない。きっと竜胆の親父さんが何かを仕出かしたに決まってる。


この勝手な推測は既に俺の頭の中で確信へと変わっていた。


薄暗い廊下で俺は拳を握り締める。


「なんや、時間かかったなぁ。」


その声に俺はハッと我に帰る。


花澤は壁にもたれ掛かりながら俺を見ている。


…全然気が付かなかった。

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