表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
70/209

ネライ

そこはこの施設には似つかわしくないような薄暗い場所だった。空調は効いている筈だがどこかジメジメとした湿気を感じる。目の前には鉄の扉が左右に2つずつ。そこには小さなガラスの小窓が付いている。施設にある他の扉とは違い、明らかに重量感がある。


俺はガラスの小窓を一つずつ覗いて回る。


そこにはテレビで見たことがあるような鉄格子。その中には粗悪なベッドで眠る月島と竜胆の姿があった。


「ほならうちが美咲ちゃんに夕食渡すわ。ナツキは竜胆君に渡してやり。」


花澤は背伸びをして小窓を覗きながら俺にそう言った。


…やっぱりそうなりますよね。


竜胆と会いたくないがそうもいかない。あいつだって代表なのだ。食事をしなければ筋力が下がる。次の戦闘に響くまで追い込む必要はない。


そう自分に言い聞かせて無理矢理納得させる。そう考えなければ体が動かない。


俺は花澤とアイコンタクトを取ると、竜胆が眠る右奥の独房の扉を開けた。


竜胆は扉が開く音に目を覚ました。


俺は鉄格子を挟んで久し振りに竜胆と目を合わせた。


「よう。誰かと思えばお前かよ。…出してくれる訳じゃなさそうだな。」


竜胆は俺が手に持っている食事を見ながら残念そうに言った。


「ああ。俺が食事の係を頼まれたんだよ。やりたくないけど断る訳にもいかないからな。」


「…そうかよ。そりゃ悲惨だな。御愁傷様。」


もう憎まれ口にいちいち反応するつもりもない。兎に角今は早くこの場を離れたい。俺は鉄格子の左側にある小さな隙間に夕食のトレーを入れる。すると竜胆は黙ってそれを受け取った。


「それじゃあな。明日の朝にまた来るから。」


俺はそう言うと、竜胆に背を向けて歩き始める。


「おい、鳥海!!」


呼び止められた。意外だ。いつもの竜胆ならそのまま黙って見送ると思うのだが…。


俺は振り返り、返事をせずに竜胆を見た。


「…あの女はどうしてた?あいつも独房に入ってんだろ?」


竜胆は珍しく目をキョロキョロと動かしながら俺に質問をする。まるで申し訳なさそうな、そんな風に見える。


「…月島先輩のことか?確かに独房に入ってるけど、まだ会ってないからどうしてるかはわかんないよ。」


「そ、そうか…。ならいい。」


竜胆はため息を吐くと、小さな声で答えた。


こいつは何を考えているのだろうか。何故あんなことをしておいてこんなに悲しそうな顔をしている?竜胆の態度に理解が追い付かない。俺はついに黙っている事が出来なかった。


「…なんであんなことしたんだよ?わかってただろ?あんなことしたら月島先輩が黙ってないって。」


「…わかってんよ。だからそうしたんだよ。」


「…は?」


意味がわからない。本当にこいつは何を言ってるんだ?


俺の不思議そうな顔に竜胆はニヤリと笑った。


「わざとだよ、わざと。俺は月島美咲と戦いたかったんだ。世界との差が知りたかったんだよ。普通に手合わせを頼んだんじゃ受けてくれないからな、あいつ。」


「…世界?どういうことだ?」


「お前は本当に何も知らねぇんだな!!月島のランクを知らねぇのか?」


「いや、だって他人のランクを知ることは出来ないし…。」


「普通ならな。でもあいつは別だ。ちゃんと資料室で見なかったのか?」


俺は黙り込む。


「現在世界で認定されてるSランク以上の人間は5名だけ。それもトップ5の国にそれぞれ一人ずつ在籍してんだよ。」


「…ってことは4位の日本にも居るってことか?」


「ああ。しかもそのSランカーたちの名前だけは資料室で確認出来るようになってんだ。それがSSランクの月島美咲ってことだ。」


息を飲む。世界に5人しか居ないSランク、それが月島だと言う。今まで同じ小隊でトレーニングをしてきたメンバーなのだ。


「ま、そーいうことだ。結果は見ての通りだったけどな。まだまだトレーニングが足りねぇ。俺は自力を付けなきゃいけねぇんだ。」


竜胆はそう言うと、トレーの上のパンに手を伸ばした。


竜胆の意外な一面を見た気がする。もっとこいつは怠惰で無気力な奴だと思っていたから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ