ジコケンオ
とは言っても…。
こんな経験無いからどうすればいいのかわからない。夕食って何を持っていけばいいんだ?
戸惑いながらも俺はトレーにパンとサラダ、牛乳を2つずつ乗せた。イメージの問題だが、独房の罪人はこんな食事でいいと思う。
俺はそれを持って食堂を出た。廊下を歩く俺の足は重い。まるで鉛で出来てるのではないかと思う程の重さだ。
「はぁ……何で俺がこんな…」
無意識にため息が漏れる。特に今は精神的にまいっている。そんなこと自分でもわかっている。
その時、俺の後ろからいきなり声がかかった。
「なんや?ため息なんてついて。」
振り返らなくてもすぐにわかった。この声は花澤のものだ。
「喜んで独房に夕食を運ぶ奴なんて居ませんて。」
俺はふいに素っ気なく対応する。本当はもっと話したい事が沢山あるのに…。
「そかそか…、そやったね。ねぇナツキ、うちも一緒に行ってもええ?美咲ちゃんのこと気になるし。」
花澤は少し寂しそうにそう言った。俺は思わず振り返る。今の花澤に取る態度では無かった。すると花澤は無理に笑顔を作る。
「そうっすね。一緒に行きましょう。独房の場所もハッキリはわかりませんし、案内してくださいよ。」
「うん!そしたら行こっか。」
花澤は俺の前を歩き始めた。その姿はどこか無理をしているように見える。昨日まで風間の部屋に引きこもっていたのだ。それなのにいつもと同じように振る舞う努力をしている。
俺はそれについて触れるべきではないと判断している。花澤はこれで大丈夫なのだと勝手に判断しているんだ。
風間のことはもう忘れた方がいいんだ。思い出させないようにした方がいいんだ。
それでいい。今は俺だけを見てくれればそれでいい。
それがこの壊れた場所での常識なんだ。
認めたくないのに、染まってしまう。それしか選択肢を知らないのだから仕方ないではないか。
わかっているのに言い訳してしまう。
俺は自分が嫌いだ。




