アラタナ
数分後、俺は菅野と共に食堂で夕食を食べていた。今日も食べるのはあのツブツブ。普段であれば俺はいつも同じ席に座るのだが…。今日は違う席。いつもの席には花澤と藤代。
あまり見ないようにしよう。意識し過ぎても良くないし…。
ふと思ったのだが、先程俺が里穂に蹴られたのは懲罰の対象にはならないのだろうか?
俺は向かいに座る菅野に聞いてみる。菅野はサラダを頬張りながら眉をあげた。
「いや、あれはどちらかと言えば教育みたいなものだろ?あの時のナツキ、すげー不満気な顔してたからな。やられても仕方ないだろ。」
ふむ。納得は出来ないが理解は出来る。確かに俺にも思う所もあった。
「それにしても…何で俺が第三小隊なんすかね?俺、いまいち団長の考えがわかんないんすけど…?」
改めて俺の心につっかえている疑問を菅野にぶつけてみた。
「…あの人の事だから何も考えが無い訳じゃないと思うよ。それに君は……。」
菅野は言葉を途中で切ってからそのまま黙ってしまった。難しい表情のまま口を押さえている。俺が一体なんだと言うんだ?
「俺がなんなんすか?」
そのまま声に出てしまった。
「…いや、何でもない。」
菅野は真っ直ぐ前を向いたまま、視線を全く動かさない。
「いや、教えてくださいよ!!半端に言われると逆に気になるっすよ。」
すると菅野は口を隠したまま俺の目をジッと見つめてくる。そしてまるで知られてはいけないかのように小さな声で答えた。
「…それは君が“鳥海”だからだ。」
俺は目を見開くが、あまり大きなリアクションをしないようにツブツブを口に運んだ。
それはタブーに触れる発言。菅野は姉の事を知っているのだ。
「菅野さん、後で部屋に遊びに行ってもいいっすか?」
「いいぜ。俺も話したい事があるしな。」
上手く行けば菅野を俺の味方に出来るかもしれない。俺は淡い期待を描きながら無表情で夕食を食べ続ける。
「ま、忘れてそうだから言っておくけど、その前に月島と竜胆に夕飯持ってってやんなよ。俺は先に部屋に戻ってるからさ。」
菅野の言葉に俺の表情はドヨンと暗くなる。確かにその通りだ。すっかり忘れていた。
「そうでしたね…。そしたら後で行くっす。部屋番号教えといてください。」
「おう。俺の部屋番号は303号室だ。来る前に内線を入れてくれ。」
「了解っす。」
俺は夕飯を胃にかっ込むと、席を立った。




