バッソク
「くそっ…。やっぱりダメか…」
竜胆は何やらボソボソと呟いている。
いつもなら怒りをあらわにしそうなものだが…。今の竜胆はそんな素振りは一切見せず、むしろ全く逆。まるで何か考え込んでいるように見えた。
「おい、竜胆。それはやっちゃいけないことだって言ったよな?実力が計りたいなら俺にちゃんと勝てるようになってからにしろ。」
松本は腕を組ながら竜胆を睨んだ。
「…ちっ。わぁーったよ。」
竜胆は静かに歩き始めると、第一小隊の席に戻った。どうやら全く悪いことをしたという感覚は無いらしく、小さく息を吐いてから頬杖をついた。
だがそこに日向が歩み寄る。そして竜胆を見下しながら口を開いた。
「竜胆、自分が何をしたのかわかってるか?」
「…あ?んだよ。……悪かったよ。」
珍しく謝罪の言葉を口にする竜胆。…初めて見たかもしれない。その姿に第一小隊のメンバーも俺も目を丸くする。
だが日向の厳しい表情は変わらなかった。
「聞いている筈だ。トレーニング以外でメンバーと拳を交えることは禁止だ。」
俺も風間から教えて貰った事がある。メンバー間の喧嘩やトラブルは罰則の対象だと。
「…だから悪かったって。」
竜胆は面倒臭そうに頭を掻いている。ことの重大さに気付いてないらしい。
その罰則とは監禁。施設の一番奥にある独房に一週間入れられるのだ。
「…飯倉さん、いいですね?」
日向が飯倉にそう言うと、飯倉は大きくため息をついた。
「仕方ねぇ。他に示しがつかねぇからな。おい松本、手伝え。」
「はーい。」
飯倉の発言に松本は軽く返事をする。そして竜胆の両腕を二人で掴んだ。
「…おいっ!!悪かったって!マジでさっ!!止めろって!」
竜胆は飯倉と松本に引き摺られて行く。竜胆はジタバタと抵抗するがあの二人の前ではそれは無駄な足掻きだ。
すると月島はゆらりと自ら席を立った。
花怜が月島に駆け寄る。そして首を横に振って悲しげな表情を見せる。
月島は再び花怜の頭を撫でると、日向を見つめた。
「鍵…閉めてね。一人で入れるから…。」
日向は目を詰むりながら頷くと、そのまま口を開いた。
「美咲…すまないな。」
「…後悔は…してない…と思うよ。…妹の…為だから…。」
月島はそう言い残すと、部屋を後にした。




