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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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ハンコウ

「…すみません。短い間でしたが第二小隊には思い入れがあったので。」


俺は里穂と目線を合わすこと無く答えた。里穂から見れば俺のそんな態度は第三小隊に対する冒涜に思えるかもしれない。それでも俺なりの反抗だった。


一瞬ではあったものの、共に戦った第三小隊の事を過小評価している訳ではない。それでも最前線で戦う他の小隊に比べればリスクは少ないのは明らかだろう。


そんな俺の考えを見透かすように里穂は厳しい口調で話し始めた。


「あんたの言いたい事はわかったわ。但し、私たちの小隊に配属されたからには仕事はしっかり覚えて貰うから。あんたがあいつの弟だからって甘やかすつもりは無い。私たちを第二小隊の甘々連中と同じ様に見ない事ね。」


里穂の目線はいつもよりもキツい。まるで俺を拒むかのような高圧的な態度だ。しかし、その可愛らしい容姿のせいで全く緊張感が伝わらない。


本当に俺よりも年上なのか…?今更になって改めて疑問に思う。腕を組んで俺を見上げるその姿はどこからどう見ても小学生にしか見えない。


その滑稽な姿に俺は少し表情を緩める。


だがそれが間違いだった。


気付いた時には俺の視界は上下逆転していた。


「ふぁっ…!?」


ドスッ………。


大きな音と共に俺の頭に激痛が走る。どうやら俺は里穂に蹴られて床に頭から落ちたらしい。俺は床に頭をつけたまま目線を上げる。するとそこには怒りの表情に震える里穂の顔があった。


「あたしは第二の連中より甘くないって言ったでしょ?舐めてんじゃないわよ。あたしはあんたみたいな自分勝手で世間知らずな奴が大嫌いなの。出来るなら他の小隊に行って欲しいぐらいよ。」


こっちの台詞だ。言葉よりも先に手が出る世間知らず。一般企業ならあんたは今の時点でクビだ。自分の意見を押し付ける事しか出来ない年増ロリが。


里穂の言葉に俺は心の中で反論する。


ここでようやく更に説教を続けようとする里穂を朝霧が止めに入る。


「里穂、今はまだ仕方ない時期だ。大目に見てやれ。」


「あんたは黙ってなさい。これはあたしの役目だから。」


「いや、ダメだ。花澤の目もある。ここは我慢すべきだ。」


「嫌よ。そんなのつくしの為にもならないわ。大体あんたはいつもそうやって情に流されて肝心な事を伝えないじゃない!!」


「俺はあくまで客観的立場でものを言っているだけだ。情に流されてはいない。」


「あんたが取るべき立場は客観的立場じゃないでしょ?何もわかってないわ!!いつもそう………ガミガミ」


夫婦喧嘩が始まった。俺はゆっくりと立ち上がると、席に座った。二人は互いに譲る気は無いらしく、その言葉の応酬は会議室に響き渡る。


だが周りの誰もそれを止めることはなく、それどころか全く気に止めずにミーティングを進めている。その中で唯一藤代だけがその姿をチラチラと気にしているだけだった。


俺は小さくため息を吐く。すると俺の隣に座っていた第三小隊の菅野が俺の肩に手を置いた。


「まぁ、あんまり気にするなって。あの二人はいつもあんな感じだからさ。」


菅野の優しい言葉に俺は少し救われる。どうせなら今菅野に俺が思っている事を吐いておいた方が楽になるかもしれない。


「俺、この小隊でやっていけるか不安しかないっす。正直、あんまり人付き合いが得意な方ではないですし…」


「風間さんも花澤も優しいからね。ま、俺から言わせればむしろあの二人が優しすぎたってだけだと思うけどね。」


「……そうっすね。」


風間の話をされて俺の気持ちは少し落ち込む。思い出すと泣きそうになる。


「でも、里穂さんだって優しいんだぜ?あの外見だから必死に虚勢張ってる所もあるんだ。本当は面倒見がいい姉御みたいな人なんだよ?」


「…それでも俺は第二小隊の方がいいっす。」


「そっかぁ…。流石に面と向かって言われると少し傷付くなぁ。」


「す、すみません。つい…」


俺は無意識に言ってしまった言葉に後悔する。いくらなんでも第三小隊である菅野に言うべき事では無かった。


「少しずつでもいいさ。俺たちの良さをわかって貰えたら嬉しいな。」


「…はい。」


まだ馴染めないのは仕方ない事なのかもしれない。必死に俺を慰めようと努めてくれる菅野の言葉が今は本当にありがたい。


少しは上手くやっていく努力をしてみよう。


やる気の無かった俺の心に少しのゆとりが出来た。

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