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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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ユガミ

薄暗い廊下をフラフラと歩く花澤。


「待ってくださいよ!つくし先輩!!」


俺は急いでその後を追い、後ろから花澤の手を掴んだ。


花澤は前を向いたまま動かない。


どうする?どうすればいい?なんて声をかけるのが正解だ?


わからないんだ。どうすればいいのか…。


「……せ…」


微かに俺の耳に入る声。何か言ったのか?上手く聞き取れなかった。


すると花澤は此方に振り向いた。その目は憎しみで満ち溢れている。


「離せっ!!」


その声は廊下に響き渡る。


「なっ……。あ…」


普段の花澤からは想像できない程の口調。俺は思わず手を離してしまう。すると花澤は再び前を向いてフラフラと歩き出した。


俺の頭の中にぐちゃぐちゃと言葉が散らばる。未だに正解は見えない。


俺が花澤に伝えたいことは何だろうか。


心配してるとかそういうことが言いたいんじゃないんだ。


俺は目を瞑り、拳を握り締めると、小さく息を吐いて呼吸を整える。そして意を決して口を開いた。


「つくし先輩。」


しかし、そう呼んだ俺の声に反応すること無く、花澤は前に進み続ける。


自分勝手でもいい。それでも言うんだ。後悔はしたくない。



「…救われたんです。……俺、つくし先輩に救われたんです。俺の中であなたの存在がどれだけ大きかったか…。心の支えになってたか。今こうして会えなくなって実感してます。」


俺の口から出た言葉はとても小さかった。言っているうちに俺の目からは涙が溢れている。


まだだ。カッコつけるな。言いきれ、俺。


「もう一人は嫌だよ…。姉さん…。俺の側に居てよ…」


その時、花澤の動きがピタリと止まった。


俺は感情を抑える事が出来ない。涙が溢れてきて止まらない。今の言葉が俺の全てだった。


俺には花澤が必要なんだ。



「…せえへんわ。」


花澤は前を向いたまま小さく呟く。そしてこちらにゆっくりと振り向く。その目からは涙が流れている。


「…うちは…あんたを置いて先には逝かへん。」


なんて辛そうな顔だろうか。


俺は何て事を言ってしまったんだ…。


「ごめんなさい…。ごめんなさい。」


俺はその場に崩れる。俺の頭の中には風間の意志が入っていなかった事に気が付く。なんて馬鹿なことを…


そんな俺の元に花澤はゆっくりと近付いてくる。


そして俺をギュッと抱き締めてくれた。まるで母に抱かれているかのような安心感。


「…ええよ、大丈夫や。うちはあんたの為に生きるわ。」


イビツだった。歪んでいた。それでも俺はいいと思っていた。


再び姉さんを失うよりも、全然マシだ。



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