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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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キュウジツ

釈放だ。俺はついに解放されたのだ。監禁生活は変わらないが、この際それには目を瞑ろう。今日も明日も明後日も…。何も予定がない。こんなに素晴らしいことはないだろう。


それはまるで大学の合格が決まった高校生。または就職が決まった大学生。俺の気分は今、最高潮だ。


さて、何をしようか。…いや、今日は1日寝よう。時間は腐るほどある。……多分。


俺は部屋の電気を消してベッドに横になる。


明日はどうしようか。休憩室で漫画か?それとも部屋でテレビを1日見てようかな。どうしよう…。あんまりパターン無いな。


一人だとやることが限られる。それに気付くのにさして時間はかからなかった。


なかなか寝つけない。


くそっ。なんだよ。…これはこれで暇だな。


ではどうする?誰かを誘って一緒に過ごすか?今ここに残っているメンバーと言えば…


あいつは無いな。無理だ。


一人はすぐに選択肢から消える。そうなれば答えは自ずと見えてくる。


藤代か。あいつなら話せそうだ。誘ってみよう。


俺はベッドから飛び起き、部屋を飛び出した。廊下に出て辺りを見回す。そこには夥しい数の扉。研修生一人一人に部屋が与えられていたのだ。この数にも納得だ。


藤代の部屋は…どこだ?


研修中は自由時間が無かった。唯一の息抜きと言えば、食堂で皆と夕食を食べている時ぐらいのものだった。誰かの部屋に遊びに行くなどもっての他だ。


俺はそれぞれの扉に耳を近付けて歩いた。人が居れば音がする筈だ。


……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……居ない。……ん?



微かに音がする。テレビの音だ。


ここか。…よし!俺は溢れそうになる笑みを堪えながら扉を叩いた。


コンコン………………ガチャ



扉が開くと、そこには竜胆の姿。


互いに目が合う。無言だ。まるで時が止まっているように感じる。なんだ、この光景は?竜胆は俺を睨み付けている。


頭が真っ白で何も言葉が思い浮かばない。それでも睨まれたままでは終われない。


「な、なんだよ。」


俺の口から出た言葉に竜胆は小さく溜息を吐いた。


「それはこっちの台詞だろーが。」


確かにその通りだ。俺はなんて初歩的なミスを犯してしまったのだろうか。部屋を出る前は気付いていたではないか。俺の顔から火が出る。


「お、おう。明日も頑張ろうな!」


ミスにミスを塗り固めた結果、もはや意味がわからない。何で俺はこんなことを言っているのか。これ以上喋ったら俺のメンタルが終わる。誰か俺の口を止めてくれ。


「おう。……訳わかんねぇな、お前。じゃあな。」


バタン


扉が閉まる。俺はその場を足早に離れ始める。最悪だ。有り得ない。


俺のメンタルは既に崩壊寸前だ。


トボトボと歩いて部屋に歩き始める。


今日は無理だ。もう俺の気持ちが付いてこない。大人しく部屋で寝る事にしよう。明日こそは藤代を連れてウエイトトレーニングでもしてみよう。体を動かすことも必要だろうし。まあ、会えればの話だが。


そう思えば少しは楽になった。竜胆の事はなるべく考えないようにしよう。まだまだ俺たちはここで監禁されるのだろうし、気にしすぎても仕方がないのだ。


…外出したいなあ…。










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