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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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クルイ

中国兵二人は竜胆を前後に囲みながら笑みを浮かべている。


「你后悔?」


前方の中国兵は竜胆に向かって声をかける。


「あ?なに言ってんかわかんねぇよ。ジャパニーズプリーズ。」


竜胆はヘラヘラとバカにしたような笑いを見せる。


「你似乎想死、小子。」


敵は不機嫌そうに武器を構えた。


「いいぜいいぜ?さっさと来いよ。雑魚キャラさん。」


竜胆は表情を崩さずに二本の小太刀を構えた。花澤と同じ、二刀流だ。


だが状況は2対1だ。不利どころの話じゃない。このままじゃ死ぬぞ、あいつ。


「おい、竜胆!!」


俺は声を上げて竜胆を呼んだ。いくら大嫌いな奴だとしても流石に見殺しには出来ない。声を出しておけば敵に対する牽制ぐらいにはなるだろう。


「…ちっ。うっせーな!!今良いとこなんだからよ、邪魔すんな。」


竜胆は怒鳴りながら俺を睨んだ。


その瞬間、中国兵はここぞとばかりに走り出した。


「おい、鳥海!!お前との格の違いってやつを見せてやるよ。まあ、見てろって!」


竜胆は敵を全く見ていない。それどころか、俺に向かって憎まれ口を叩く。


おいおいおい、何やってんだよ!気付いてないのか!?


竜胆と前後の敵との距離が詰まる。そして敵は同時に剣を振り上げた。


だが…


「げほっ、げほっ。」


気付いた時には、竜胆の背後を取っていた中国兵の首には小太刀が刺さっていた。男は苦しそうに咳をし、血を吐いている。


さらに前方の敵の下腹部にも小太刀が刺さっているのが見える。


それに比べて、中国兵の剣は竜胆を捉える事なく、二本共地面に刺さっていた。


何が起こった?


竜胆は確かに敵を見ていなかった筈だ。何故そんな事が出来る?


俺の開いた口は塞がらない。


すると首を刺されていた中国兵が倒れる。竜胆はそいつから小太刀を素早く抜くと、前方の中国兵の下腹部に向かって血がベットリ付着したその小太刀を突き刺した。


敵は立ったまま痙攣を起こしている。2本の小太刀が腹部に刺さっているのだ。想像しただけで俺の腹も痛くなる。


竜胆はそのまま小太刀を滑らせて腹を捌いた。敵の腹からは内臓がドボドボと溢れる。



「ふふふっ…。あっはっはっは!!」


竜胆は小太刀を抜き、立ち上がると、いきなり笑い始めた。


敵だったその物体は無言のまま地面に倒れた。


「だせぇ!だせぇな!さっきまで自信満々だったクセに、こいつら死んでるよ。やっぱり雑魚じゃねーかよ、この野郎、この野郎!!」


竜胆は狂喜に満ちた表情で死体を蹴る。


それも一度どころではない。蹴って蹴って蹴りまくる。


そして地面に転がった内臓を踏みつけて磨り潰す。


まるで地獄絵図だ。


俺はそんな竜胆の姿に恐怖心を抱いた。


何なんだよこいつ。普通じゃない…。


「おい、それぐらいにしておけよ。」


俺の背後から竜胆に向けて声がかかる。振り向くとそこには飯倉の姿があった。既に残りの敵も仕留めたらしく、首なしの死体が増えているのがわかった。


「ふひひっ。さーせん、隊長。」


竜胆は靴裏に付いた血肉を地面に擦り付けて落としている。まるで汚いものを踏んでしまった時のように…


飯倉は無線を取った。

『こちら第一小隊隊長飯倉より日向団長へ。花澤、鳥海と合流し敵一個小隊を撃破完了。花澤重傷、鳥海軽傷の為、治療役の安井と共に本部へ帰したく思います、どうぞ。』


『こちら日向より、第一小隊飯倉隊長へ。花澤、鳥海、安井の帰投を許可する。』


『りょーかい。動けるようになり次第、そっちに帰します。』


飯倉は無線を切ると、俺を見た。


「っー訳で、お前の戦いはここまでだ。安井と共に本部へ戻り、そこでちゃんとした治療を受けてこい。あとは俺たちに任せろ。」


「お、俺もまだ戦えます。」


しかし言葉とは裏腹に、本心では帰りたかった。

こんな所に居たくなかった。体の節々が痛いし、切り傷はジンジン痛むし、汗でベトベトだし。


「…そんな目じゃ、この先には連れていけねぇな。…お前は逃げてるよ。既に敗戦兵だ。」


飯倉は俺の頭をワシャワシャと撫でると、そう言った。


「景虎、こいつらは任せた。頼んだぞ。」


「へいへい、了解っ。はぁ…。また損な役回りを…ブツブツ…」


飯倉は松本と竜胆を連れて三人で走り始めた。


俺が…敗戦兵?


確かにそうかもしれない…。俺は、飯倉の無線を聞いて安心してしまった。生きて帰れると…。


俺は本当にここに居るべき人間なのだろうか?姉の事が知りたいとここまで来てしまったが、俺には戦う覚悟が足りてない。そんな俺を見透かすような飯倉の先程の言葉に胸が痛む。


「……ツキ。……おい、ナツキ!!」


ハッとする。安井は俺の名を呼んでいる。


「す、すみません!!何でしょうか?」


「とりあえず止血は終わってる。あとは本部まで運びたい。担架を用意するから手伝ってくれないか?」


花澤の傷口からの出血は見事に止まっているが、まだ縫合は完了していない。


先程よりも顔色が良くなっている花澤。俺は胸を撫で下ろす。


「景虎さん、有難うございました!凄いっすね?もしかして元々医者だったんす……」


花澤から安井へと目線を動かしながら俺は話をする。だが俺の口は途中で止まった。安井の後ろには見覚えのある巨体。血だらけのそいつは安井に向かって剣を振り上げている。


安井は俺の視線に違和感を感じて後ろを振り返った。




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