シニタガリ
第一小隊の戦いは俺の予想を遥かに超えていた。
松本と飯倉は止まることなくその場を走り回っている。どうやら二人は同じような武器を使っているらしい。刃渡りは50センチぐらいだろうか、見たこともない程の薄い刃が太陽光に照らされてキラキラと光っている。
5人の敵の中には雪に匹敵するほどの大男が一人。その手にはこれまた大きな槍。中国の新兵だろう。首からは緑色のドックタグを下げていた。
明らかに回りの中国兵よりも存在感を放っている。こいつが小隊長だろうか?
そこへ松本が距離を詰める。大男は槍を構えて迎撃態勢を取った。しかし、松本はフェイントを入れながら振り出されたその攻撃を簡単に避ける。と同時に男の左膝を切りつけ、松本はそのまま走り去っていった。
男は崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。その膝は真っ赤に染まっており、苦悶の表情を浮かべていた。
その時だった。息する間も無く、苦悶の表情のまま大男の首が飛んだ。
飯倉だった。
この一連の動きは松本と飯倉の連携のようだ。
僅か数秒の出来事だった。
大男の首からは血が吹き出し、辺りは血の海となる。
「うわぁぁぁぁ!!!」
中国兵の一人は声を上げて逃げ始めた。
しかし、飯倉は簡単にそいつを追い越し回り込んだ。単純に足が速い。
「…逃がさねぇよ。」
飯倉は笑った。まるで悪魔のような笑み。
進行方向を塞がれたその男は覚悟を決めたらしく、立ち止まり、震える手で武器を構えた。
だが次の瞬間、男の頸動脈から血が吹き出した。
それは松本の仕業だった。背後からの一撃だ。
「がっ………かはっ……。」
男は吹き出る血を押さえながらその場に座り込む。その目からは段々と生気が失われていくのがわかる。
「おっと、悪いな。手元が狂った。今、楽にしてやるよ。」
松本はそう言って刀を手元でクルクルと回して握り直すと、男の首を跳ねた。
俺は思わずその凄惨な殺人から目を反らす。…気持ち悪い。
人が目の前で殺される所なんて見たことがない。しかも首を切られて死ぬなんて…。覚悟はしていたが、ここまでグロテスクだとは思わなかった。
あんなに血って吹き出るものなんだ…。
目の前に転がる敵の首は目を見開いたままこちらを見ている。
…ダメだ。吐く。
「おぇぇぇ…。うっぷ…おぇぇぇぇ。」
俺は盛大に吐いた。
「バカ野郎、吐くならあっちで吐け!!」
花澤の治療を続けていた安井は俺の嘔吐に驚き、声を上げた。
「すみません、人の死体見るの初め……ぉぇぇぇぇ…」
「おいこら!!俺の話、聞いてんのか!?」
安井は眉間にシワを寄せながら怒る。
「すびまぜん……ぅっぷ…」
俺は何とか立ち上がると、近くを流れる沢に向かい、再び吐いた。
情けない。こんなことで…。
俺はふと目線を上げる。するとそこには二人の中国兵に囲まれている竜胆の姿があった。




