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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
33/209

カウント

「…以上でミーティングを終わる。それぞれ着替えを済ませてから自陣フラッグに移動をしてくれ。」


最終ミーティングが終わったのは正午を過ぎてからだった。早朝6時に首我名島に降り立った俺たちは日本チームのテントでミーティングを進めていた。


この島は今は無人島と言うこともあって木々が生い茂っている。これでは遠目の視界は皆無と言っても過言ではない。視力1.5の俺でさえ暗い森の中では50メートル先も見えない。


俺は見える範囲に人工物らしきものは見当たらない。舗装された道も無ければ港もない。本当にこんなところに人が住んでいたのだろうか?もはやそれすらも怪しい。


「あっつー…。隊長、うち水着になってもええ?」


花澤はパタパタと手で顔を扇ぎながらダルそうに言った。すると風間はなに食わぬ顔で言葉を返す。


「ああ、別に構わんが。」


やれるものならやってみろと言わんばかりの表情だ。


「…ふーん。そっか。ええの?ホンマにええの?」


花澤は風間の挑発に乗った。Tシャツの裾を掴んでお腹を見せ始める。だがそれでも風間は全く相手にしない。


「脱いじゃうからね!知らんよ?ホンマにええの?」


…止めなくては花澤がかわいそうだ。涙目で子どものようにムキになる花澤を放っておく訳にもいかない。


いや、見たい気持ちはあったさ。そりゃ。


でもそれはモラルの問題だろ?


「つくし先輩、いくら暑いからって脱いじゃダメっすよ。」


なんて紳士的な発言だろうか。これは自画自賛せざる終えない。


「…まっ、ナツキがそう言うなら仕方ないわ。今回は止めとくわ。それにしたってあの馬鹿兄はうちのこと全然気にしてくれへん。ブツブツ……」


「まぁ まぁ まぁ。」


俺は膨れる花澤をなだめた。すると風間は呆れたように口を開く。


「つくし、お前はもう少し緊張感というものを持て。大体お前はいつも……」


「……ねぇ…そろそろ……時間…だけど…?」


意外な人物により風間の説教は中断させられた。月島だ。


「あ、ああ。もうそんな時間か。すまない。」


月島に指摘されたのが余程ショックだったらしく、風間は少し萎んでいた。風間のこんな姿見たことがない。俺の中で少し風間に対する見方が変わった。


「それじゃあ後でなぁ。うちらはあっちやから。ベーっ!」


花澤はそう言って風間に憎たらしい表情を見せると、月島と共に別のテントへと入っていった。


「はぁ…。ナツキ、私たちも準備をしよう。」


落ち込む風間に連れられて俺は着替えスペースへと移動した。そこでは第一小隊メンバーがそれぞれの筋肉を自慢し合っていた。


「見ろ、この筋肉を!!」


飯倉は明らかにふざけている。確かに飯倉の6つに割れた腹筋は素晴らしい。だがその隣で静かに着替えている朝霧の筋肉と比べてしまうと、まるで大人と子供のように違う。


「朝霧さんてすげー筋肉っすね?」


俺は少し興奮しながら風間に言った。


「彼はストイックだからね。10年以上前からあの体型を維持しているらしいよ。」


「へー。ちょっと尊敬しますね。」


自分から聞いておいて、さして興味のない返事をしてしまう。俺の悪い癖だ。


「さて、ナツキ。これがお前のドックタグだ。受けとれ。」


風間はポケットから小さな箱を取り出すと、それを俺に向けて投げた。俺はしっかりそれをキャッチすると、早速箱を開けた。そこには緑色のドックタグが入っている。


“class C Toriumi”


「カッコいいっすね!これを首から下げるんすね?」


「ああ、そうだ。」


風間はそう言って自分のドックタグを首に着けた。そのドックタグは青色に光っている。


「あれ?俺とは色が違うんすね?」


「…あ!…ああ。…実はランクによってドックタグの色は違うんだ。…すまない。油断していた。ナツキがあまりにも堂々と自分のドックダクを見ているものだから…。私も全く隠さずに着けてしまった。」


風間は動揺を隠せない。普段からメンバーのランクは隠す命令が出ているのだ。それは仕方のないことだろう。


「俺の緑と風間さんの青以外にも色があるんすか?教えてほしいっす。」


俺はここぞとばかりに風間を攻撃する。チャンスだ。


「ふぅ…。俺の落ち度だ。素直に教えよう。ドックタグの色は全部で4色ある。C~CCCは緑、B~BBBは青、A~AAAは赤、S~SSSはシルバーに分かれているんだ。」


風間はそう言って自らのドックタグを俺に見せてくれた。


“class BBB Kazama ”


「なるほど。だから俺のドックタグは緑色で、風間さんのは青色なんすね。」


「そういうことだ。」


「じゃあ風間さんは…」


「おっと。そこまでにしておけ。」


俺の話しは中断させられる。風間の目線の先を見ると、日向の姿が見える。


「ま、あまり参考にはならん。気にするな。」


風間は当たり障りのない言葉で閉めた。


つまりは俺は毎日BBBランクである風間を相手に組手をしていたと言うことか。俺は心の中で歓喜する。花澤の話ではAランク以上はかなりの実力者とのことだった。それに次ぐランクBBBの風間に稽古をつけてもらっていたのだ。俺だって強くなっているはずだ。


少し拳に力が入る。早く自らの力を試してみたい。果たして実戦で通用するだろうか?


「さあ、早く着替えを済ませよう。少し準備運動もしたいからね。」


風間の言葉を聞いて我に帰る。


俺は早速迷彩服に着替え始めた。これは自分が選んだ迷彩服。もちろん自分で選んだのだから結構気に入っている。


そして脇差し、ナイフを腰に装着する。鏡を見ながらアンバランスな格好に首を傾げた。


「なんか…カッコ悪いな。」


つい独り言が出てしまった。横を見ると、風間も着替えが完了していた。


深緑の迷彩服。腰には大きな日本刀が二本見える。両肩には刃渡り10センチ程の小さなナイフが3本ずつ装備されている。


「…カッコいい。」


また独り言が出た。

まるで似合っていない俺とは違い、風間には風格と言うかオーラと言うか、何とも言えない隊長らしさが滲み出ている。


「ナツキ、あと君にはこれだったね。」


風間は俺の目線に気付くと、そう言ってハンドガンを俺に手渡してきた。


「セーフティ(安全装置)はかかっている。わかってると思うけど、銃弾は一発しか入ってないからね。良く考えて使うんだ。」


俺はそれを受けとる。射撃訓練以来の感触に緊張感が走る。


「あれ?風間さんはハンドガン無いんすか?」


そういえば風間の装備にハンドガンが見当たらない。何処かに隠しているのだろうか。


「いや、俺は今回装備しない。ある人に預けたからね。」


「…ある人?」


「ああ、とあるスナイパーにね。」


俺は納得した。うちのチームのスナイパーは確か一人しか居ない。つまりあの人は数人から銃を預かっていると言うことか。それならば銃弾は一発ではない。


だがそれにしたってどうやってハンドガンで狙撃を…?


今再びの苦悩。モヤモヤして気持ち悪い。まるで密室殺人の謎が解けたのに犯人がわからない探偵のようだ。


「さあ、そろそろ行こう。もう二人とも外で待ってるかもしれないし。」


風間に急かされて俺たちはテントを出た。そこには既に花澤と月島の姿があった。女性の着替えと言えば時間がかかるイメージがあったのだが…。それはこの二人の前では無意味な妄想でしか無かったようだ。


「おっそいなぁ。待ちくたびれたわぁ。」


花澤は木に寄りかかりながらいじけている。


緑と黒の迷彩、両腰には刃渡り30センチ程のナイフを装備している。


それに比べて月島の装備は異様だった。まず迷彩服でないのだ。上下真っ黒な服に、墨色の大きな腰布を巻いている。そして何より、武器が見当たらない。


「えっ!?月島先輩、武器無いんすか?」


「……あるけど…?」


月島はそう言って手元にアイスピックのような物をいきなり出現させる。


いや、どこから出したんだよ。全く見えなかったぞ?


「は、はぁ。あ、安心しました。」


俺は呆気に取られる。多分詳しく聞いても月島は教えてくれないだろう。


「さあ、行こうか。忘れ物は無いな?」


風間の号令で身が引き締まる。俺たちは黙って頷くと、自陣フラッグへと歩き始めた。





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