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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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テンカイ

風間が指差す場所は島の北側。等高線からして谷になっているように見える。


「いや、でも谷は危ないんじゃないですか?研修でも習いましたけど、相手より上の位置にいる方が有利なんじゃ…?」


「確かに丘に上がった方が有利ではあるな。でも良く見てみろ。ここは他の地形からは分断されている。」


確かに島の北側は南側に比べて高低差が激しく、そう簡単には進めそうにない。


「もし俺たちがここを突破出来たらどうなる?」


「…そのまま相手のフラッグに近づけますね。でも普通はその前に救援部隊が……あ!」


「そういうことだ。救援部隊は多分間に合わない。なんせ丘を越えて来るか、迂回するしかないからね。」


「でもだったらこの北端の丘を登った方ええんやないの?」


花澤は首を傾げながら北端の丘を指す。確かにそれもそうだ。少しでも有利な位置を取るのが定石だ。わざわざ谷を進むのはやはり気が引ける。


「多分相手もそう思って北端の丘を登るだろうね。だからこそ俺たちは下から行くんだ。良く考えてみろ。俺たちが谷を進んだ場合、その北端の丘に展開する敵部隊が取る行動は二つ可能性がある。わかるかな?」


風間は俺を試すようにニコニコと笑顔を見せる。


さて、どうしたものか…。俺だったらどう思うかな。俺は口を抑えて考える。


「…俺たちを発見して追いかけるか、そのまま気付かないで前に進むか、ですかね?」


「まさにその通り。では聞こう、例えばその部隊が俺たちを見つけたとして、果たして追い付けるかな?」


「それは無理やな。だってうちらは最短ルート通っとるし、それに敵部隊は丘を登って疲れとるやろ?いくら下りとはいえ、例え追い付いたとしてももうヘトヘトや。」


「まあ、そういうことだ。この作戦はどうだろうか?」


確かに風間の読みは素晴らしい。これならば上手く行けば俺たちはフラッグを取れるかもしれない。だが俺にはこの作戦のデメリットが気になって仕方ない。


「もし、俺たち小隊がピンチになったらどうするっすか?相手が救援に来れないってことは俺たちだって同じですよね?これ、下手したら挟み撃ちにされますよ?」


こんなギャンブルな作戦を組むわけにはいかない。俺はまだ死ぬわけにはいかないのだ。例え少しでも可能性があればそれを最小限に抑える必要がある。


「そうだな。ナツキの言うこともわかる。しかし、俺たち小隊はそういう役回りを受持つ必要があるんだ。ある程度のリスクは致し方ない。きっと第一小隊は俺たちよりももっと危険なルートを選ぶと思うよ。」


それを言われると何も言えない。確かに他のルートに比べればリスクは少ないかもしれない。なにせフラッグまで敵と合わない可能性だってあるのだ。


もしかしたら俺は逃げていたのかもしれない。


リスクを考えるあまり、この戦いの根幹を忘れていた。


誰でも死ぬ可能性はあるのだ。リスクがゼロの殺し合いなど存在はしない。もしあったとしても、それは只の一方的な処刑に過ぎない。


俺は謝罪の意味を込めて風間に同意した。


「わかりました。俺は風間さんの意見を尊重しますよ。」


風間は俺の言葉を聞き終えると、花澤と月島に目をやる。


「よし。つくし、美咲、これでいいね?」


「うちはええと思うわ。後は兄ちゃんに任せるわあ。」


「…うん。わかった。」


花澤に続いて月島も返事を返した。

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