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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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アイズ

ここへ来て何度目の朝だろうか。窓がないから時間の感覚がない。本当に今は朝の5時なのだろうか。携帯を開きながら小さく息を吐く。


2週間目の朝だ。壁に掛けられたカレンダーを見て理解する。いつもと同じ繰返し。シャワーを浴びてから着替える。クリーニングしたばかりのウェア。毛先が散らばった歯ブラシ。机の上の家族写真。


「それじゃあ、いってきます。」


誰もいない部屋に向かって俺は声をかける。



部屋を出たら鍵をかける。そして202号室をノック。


「はいりますよー?」


やはり返事はない。手慣れた様子で扉を開け、玄関で音量を上げる。


「せんぱーい!置いてきますよ?」


「……っ!?あっ…痛ったぁ!!」


これもいつもと同じ。まったく毎日どういう姿勢で寝ているのだろうか。もしくは余程不安定なベッドなのか。もし後者だとしたら少し興味はある。


「………すぐいくわー。」


花澤は遅れて返事をする。仕方ない人だ。でも、一番信頼している人。多分この人が居なかったら俺はここでの生活に耐えられなかったかもしれない。言葉には出さないが、俺は感謝している。



あれから変わったことと言えば、朝のトレーニングの後に毎日風間と組手をしていることぐらいだ。


未だに一度も勝ったことはないが、成長しているという実感はある。なにせ倒されるまでの時間が段々と長くなっているのだ。

型にハマらない動き。実際の戦闘では相手は何をしてくるか読むのは難しい。それを養うには場数を踏むしかないのだと風間は言う。


いつも通りの組手が終わり、いつも通りの朝食。最近は花澤の食欲に付いていけるようになってきた。実際美味しいんだ、あのツブツブ。実は花澤と俺とのマイブーム。


部屋に戻ってから昨日の洗濯物をまとめてクリーニングに出しに向かう。この施設にはクリーニング施設も併設されており、そこに衣類を出せば翌日にはピカピカの状態で戻ってくる。もちろん料金はかからない。まさに至れり尽くせりだ。


さて、部屋に戻って準備しよう。


俺は空っぽの洗濯籠を持って歩く。足取りは軽い。ここからはいつもと違うのだ。なんせ今日は待ちに待った外出日だ。


メンバーには一週間に一回、外出日が与えられる。自由に外に出て良いのだ。但し、護衛という名の監視役を付けられる。そして家族に会うことも禁止される。これは、家族の身を案じての事だと風間は言っていた。俺たち代表の情報は国家レベルの機密だ。もし身元がバレれば、その家族に危険が迫る可能性があるらしい。どおりで姉は家に帰ってこなかった訳だ。



俺は部屋で身支度を始める。久々に着るTシャツ。


今は6月か…。長袖のがいいかな?


季節感が無いから全然わからない。果たして今日は寒いのだろうか、それとも暑いのか。空調の効いたこの施設では外の気候を知ることなど出来ない。俺は携帯で天気を調べる。


だが、その検索は無意味に終わった。



カーンカーンカーンカーン


聞いたこともない音が俺の部屋に響く。どこからしている?…ここか?


天井に付いたスピーカー。今まで一度もそこから音が出たのを聞いたことはない。俺はてっきり壊れているとばかり思っていた。


何かのお知らせかな…?


俺はさして気にしていなかった。いや、気にしたくなかった。もし何かの合図だったとしても今日の外出が潰れるのだけは勘弁して欲しい。昨日から本当に楽しみにしていたのだから。するとその時…


ドンドンドン


俺の扉を叩く音が聞こえる。これはノックというよりかは破壊しにきている。部屋の扉が壊れる前に俺は玄関へと向かった。そして鍵を開ける。そこには息を切らした花澤の姿があった。


「はぁ…。はぁ…。……っ招集や…はぁ…。」


何故そんなに慌てているのだろうか。先ほどの音といい花澤といい普通ではない。俺はただならぬ雰囲気を感じていた。


「何が始まるんすか?」


「はぁ…。本番や…。」


「本番?」


「戦いが始まるゆうこっちゃ。すぐ招集や。そのままでええから、行くで。」


外出の夢は途切れた。本当はそんなことどうでもいいのだが、現実逃避のせいかそれが気になって仕方なかった。無抵抗な俺を引っ張りながら花澤は走り始める。その途中でようやく事の重大さに気付く。


「マジっすか!?えっ?どこと戦うんすか?」


「それを今から聞きに行くんやろが!」


花澤は珍しく突っ込みに回っていた。いつもの通路がやけに長く感じる。


ついに始まるのだ。殺し合いが。



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