ソウグウ
息が切れる。
目標物の入ったバッグを松本から受け取った俺は最短距離を抜ける為にボロボロの廃屋を真っ直ぐ通り抜けた。数分後、俺の口から出た空気は尾を引きながら後方へと抜けていく。耳を澄ますと微かに聞こえる異なる人間の吐息。
後ろに居る。確実に居るのだ。
このプレッシャーは普通の人間が発するものではない。産まれて今まで感じたこともがないプレッシャーだ。
だが振り返るのは怖い。多分振り返ったら終わりだと思うから。
だがそう思った刹那、後ろから聞こえていた筈の吐息が真横から聞こえ始める。
視界に影がちらつく。思わず振り向くとそこには見たこともない男の姿があった。その男は金色の短い髪を風に揺らしながらゆっくりと俺の方を向いた。その表情は空っぽだった。色に例えるなら無色。まるで全てを悟ったように俺を眺めている。そしてしばらく並走した後に男は突然口を開いた。
『…止まれ。そうすれば殺しはしない。』
背筋が凍った。一瞬その男から漏れ出た殺気で足が止まりそうになる。俺には誰からも教えられなくてもわかる。この男が世界最強の男、レギナルドであるということが…。
俺は涙を一滴置き去りにして歯をくいしばった。ここで俺が足を止めるということ、それ則ち日本チームの今までの努力を全て無駄にするということだ。それは絶対ダメだ。
『嫌だ!俺はここで止まるわけにはいかない。』
俺が男に向けてそう返すと、男は無表情のまま俺を簡単に追い越した。そして目の前に立ちはだかると、素手で攻撃を始めた。
俺は咄嗟に先読み能力を発動させて男の攻撃を流れるように回避すると、そのまま走り抜けた。
よしっ!これで相手はしばらく追い付けない筈だ!
俺は小さくガッツポーズをする。だがここで意外な事が起きた。耳に残っているのだ。あの男の吐息が…。
思わず俺は振り返った。するとそこにはぴったりと俺の後ろに張り付くヤツの姿があった。




