サクセン
『いい加減倒れなよ。もう立ってるのもやっとだろ?』
鋭く吊り上がった目の男は高橋を睨みながら首をかしげた。すると高橋は刀を地面に差して体を支えながら答えた。
『…わざと言ってんのかい、ラインハルト?俺が倒れる時は死ぬ時って知ってるだろ?』
『…せっかくの忠告を無下にするとはな。だったらおとなしく死ぬんだな。』
ラインハルトが手をあげると、両隣に立っていた男たちは高橋に向かって走り始めた。
「ったく…キツいぜ。復帰戦でいきなりAランク3人を相手だもんなぁ…」
高橋はそう呟くと、地面を両足で蹴って走り始めた。
ガキッ ガキッ
高橋は刀で二人の男の攻撃を受け止めるが、既に背中と脇腹に刀傷を貰っていた為に動きが鈍かった。その時、一人の男が隙をついて高橋に足払いを仕掛ける。
「くっ…!?」
高橋は一瞬バランスを崩すが片手をついてそのままクルリと回った。だが顔をあげると目の前にはもう一人の男の剣が迫っていた。
高橋はギリギリで体を反らしてその攻撃を避けると、そのままバク転して体制を立て直した。だがその時、高橋は背後から何とも言えないプレッシャーを感じた。すぐに振り返るとそこには短刀を突き出すラインハルトの姿があった。
『はははっ!!気付くのが遅かったなぁ!』
今から避ける事は間に合わない。ラインハルトの短刀はすぐそこまで迫っている。
「ちっ…悪いな、日向。」
高橋は目を瞑って小さく呟いた。
…パァン
だが辺りに響いた銃声を聞いてすぐに目を開いた。目の前のラインハルトは肩を押さえながら俺から離れていく。高橋は何かを察してすぐに背後の敵二人から距離を取った。
『くそっ!誰だ!?』
そう叫んだラインハルトの肩からは血が流れているのがわかる。二人の男はすぐにラインハルトの隣に並んで治療を始めた。
「…おい義正、お前今諦めただろ?情けねぇな。」
高橋の背後から声がかかる。すると高橋は口元を緩めてから振り返った。
「うるせぇな。3人も相手にしてんだから仕方ないだろ?お前と違ってこちとら最前線で戦ってんだよ。」
「だから来たんだろうが、バカ野郎。」
「…わかってんよ、日向。」
そこには日向の姿があった。日向は撃ち切ったハンドガンを地面に投げ捨てると、刀を鞘から出してゆっくりと構えた。すると高橋は水を得た魚のようにピョンピョンと跳び跳ねてからストレッチを始めた。
「いつぶりだろうな?」
「…学生以来じゃねーの?」
高橋はニコニコと笑いながら日向の肩を叩いた。まるで若返ったような感覚だった。日向と高橋は大学の同期であるが、実は幼少期からの親友でもある。近所に住んでいた二人はずっと一緒に過ごしてきた。神童と呼ばれていた日向の右手として高橋は絶大な信頼を置かれているのだ。
「行こうぜ、日向!」
「ずいぶん元気じゃんか、お前?」
「今元気になったんだよ!」
気合い十分の高橋を横目に日向は呆れたように息を吐いていた。




