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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第二章 “痕に残る者”
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カンシャノキモチ

花澤はここで手を緩める事はしなかった。目に太陽の光を反射させながらポールに攻撃をしかける。忙しなく動き続けるその姿はまるで蜂鳥のようだ。


ポールは長く伸びたショットジャベリンを使って器用に防ぐが、段々とその圧倒的な手数に切り傷を作り始める。花澤はその体型故に一撃一撃が軽い。ポールはそれを察して何とか耐えながら逆転の一手を模索していた。


「残念やけどこれで終わらせるよ!」


花澤はそう言ってから右手のナイフを振り出した。だがポールはその攻撃の隙を見逃さなかった。


ガキン!


「負けません!ワタシは、あなたを絶対に…」


ポールは花澤のナイフを力強く上に弾き飛ばす。飛び上がったナイフは一瞬花澤とポールの視線を遮った。その瞬間、花澤はニヤッと笑うと勢い良く口を開いた。


「いくで、必殺!」


ポールは一心不乱にショットジャベリンの再装填 を行っている。


すると花澤は地面に落ちてくるナイフにタイミングを合わせて右足を振り上げた。


と同時に花澤の右足によってナイフが刃をポールに向けて発射された。体重が乗った状態で打ち出されたナイフはポールの心臓に向かって真っ直ぐ飛んでいく。


「…っ!?」


ポールは焦りながらも何とか右腕を心臓の位置に持っていく。


「ぐぁぁ!!」


ポールの右腕に花澤のナイフが突き刺さった。貫通はしていないものの、ナイフは簡単には引き抜けない程腕に深く突き刺さっている。


しかし花澤の技はこれで終わりではなかった。花澤は回転しながら後ろ蹴りの体制を取った。


「はぁぁぁぁ!雀蜂すずめばちっ!!」


花澤は左足をポールに突き刺さったナイフに向けて蹴り出した。花澤によって押される形になったナイフはポールの右腕を貫通して胸に突き刺さった。


ポタ…ポタ…


「……やっぱり……あなたは美しい。」


ポールはそう言ってからニコッと笑った。その足取りはまだしっかりしている。


「…胸になんか仕込んどるな?」


花澤は残った左手のナイフをポールに向けながら眉を曲げた。するとポールは右腕ごと胸に刺さったナイフを引き抜くと、明細服のボタンを外してそこに仕込まれていたセラミックス板を花澤に見せた。


「…はい。でも…負けですね。」


ポールは震える声でそう言うと、力を振り絞って自らの右腕に貫通したナイフを引き抜いた。するとそこから大量の血がこぼれ出した。


「確かにあんたは強くなっとったよ。良くAランクまで頑張ったね。」


「…あなたが……好きでしたから。やっぱりダメですか?ワタシと一緒、ドイツ行かないですか?」


ポールは悲しそうにそう言うと、腰のポーチから止血剤を取り出して傷口に振りかけた。そして口に包帯をくわえながら器用に右腕に巻いていく。


「…想ってくれるんは嬉しいけどなぁ、うちには他に大切な人が居んねん。」


「……そう…ですか。」


ポールは花澤から目線を落とすと、続けてゆっくりと肩も落とした。


「そいつは危なっかしくてなぁ…。うちが居らんと何も出来んねん。だからうちはあんたと一緒に行かれへん。どうなろうと最後の時までそいつの隣におらなあかんねん。」


花澤何かを悟ったような表情をしながら表情を緩めた。するとポールは小さく息を吐いた。


「…ワタシは諦めません。でも、それは、今では無いです。だから……気を付けてください。」


ポールはそう言ってからグッと唇を噛み締めた。すると花澤はゆっくりとポールの元へと歩み寄り、震える手を取った。


「さんきゅー。その気持ちは貰っとくわ。」


そして満面の笑みを見せた。ポールは花澤の手をしばらく握った後、決別するように後ろに向かって歩き始めた。


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