サイセン
前線の戦いが優勢に進む中、フィールドの中央付近では高橋、花澤、藤代の3人が敵の猛攻をなんとか食い止めていた。
「はぁはぁ……っ!?冬馬、後ろから来とるよ!」
カキッ
藤代は花澤の声に反応して何とか敵の攻撃を受け止めた。
高橋と花澤は何とか敵の動きに反応出来ていたが、藤代は既に敵から刀傷を複数貰っていた。藤代は攻撃を往なしながらジリジリと後ろに下がると、花澤と背中合わせになった。
「すんません。助かりました!」
「ええよっ。今は前に集中して!」
花澤と藤代は簡潔に言葉を交わすと、離れるように前に走り始めた。
…初めての実戦がこれじゃキツいやろな。
花澤は目の前の敵に集中しながらもチラチラと藤代の事を気にしていた。
『なぁお前、蜂鳥だろ?』
すると花澤の目の前の敵が突然英語で話し始めた。もちろん英語などわかる訳無い花澤は特に反応することはなかったのだが、その敵は一度花澤と距離を取ってから再び話始めた。
『俺のこと覚えてないのか?ほら、前に戦っただろ?』
その男は茶色い髪にモデル体型、妙に細い眉毛がやけに存在感を放っている。やけに自信あり気に訴えかけるその姿に花澤は一度手を止めてから首を傾げた。
「…な、なんや?うちに何か伝えたいことがあるんか…?」
花澤はそう呟いた後に英語にチャレンジしてみる。
「そ、そーりー。アイドンすぴーくいんぐりっしゅ!」
すると目の前の男は声をあげて笑い始めた。まるで喜んでいるかのようなその表情に花澤は再び首を傾げた。男は笑い終えると目に溜まった涙を拭いてから口を開いた。
「すこし、にほんご勉強した。僕のコト、知っていない?」
カタコトの日本語で説明し始めた男に花澤は口を開けたままパチクリと瞬きをする。そして見たことがあるような男の顔を基に記憶を辿り始めた。
「…あっ!……えっと、前に戦った…名前が確か……ポーク?」
「…ポールだよ。」
男は苦笑いしながら訂正した。
「…それで?」
花澤は急に厳しい視線でポールに言葉を送った。今は戦いの最中なのだ。こんな無駄話をしている余裕など本来あり得ない。
「覚えてる?前、戦った時、わたし負けた。その時、あなた言った。強くなったらまた戦ってくれるって。そしてわたしが勝ったら、あなたをドイツに連れていってもいいって!」
「…え?」
花澤は真剣な表情のまま瞬きをする。もちろんそんな約束した覚えは無い。ただ…何言ってるのかわからなかったけど勝ち際にポールに言葉をかけられてyesと言った覚えはある。
「いや待って!うちそんな約束は…」
「今でもわたしはあなたが好きです。だから勝ってあなたを奪います。大丈夫です、殺しはしません。」
ポールはそう言ってから武器を構えた。その目はとても冗談には見えなかった。すると花澤は諦めたように小さく息を吐いた。そして自らも武器を構える。
「仕方ないなぁ。真剣ならそれに応えるんがスジや。うちに勝てるんやったらそれでもええわ。」
花澤の言葉が通じているのかはわからなかったが、ポールは小さく頷いた。




