ノウリョクノツカイカタ
里穂は右足に隠していた最後の投げナイフを投げた。
『…っ!?』
左肩にナイフが刺さるが、エレノアは動きを止めることはしなかった。そのまま刀を突きだして里穂へと向かっていく。
『はあぁぁぁ!!』
たが刀が心臓に届く直前、里穂は身体を捻ってギリギリで致命傷を避けた。半月刀は里穂の右肩を抉って地面に刺さる。エレノアは苦悶の表情で自らの左肩に刺さったナイフを引き抜くと、再び半月刀を振りかぶった
里穂は力を振り絞って立ち上がると、地面に落ちていた投げナイフをエレノアに向けて投げ始める。
『させないっ!』
エレノアは太陽を反射させようと半月刀の角度を調整する。だが太陽の光は里穂の目を照らすことはなかった。エレノアが焦りながら自らの足元を見渡すと、そこは大きな木陰の中だった。
里穂のナイフをエレノアの心臓に向かって飛んでいく。だがエレノアはそれも想定内だった。ギリギリで回避をすると、ナイフはエレノアの頬をかすってから地面に落ちた。エレノアはすぐに体制を立て直して里穂に目線を移した。
『なっ…!?』
しかしエレノアの目の前には次のナイフが迫っていた。
カンッ!カンッ!
エレノアは半月刀でナイフを弾きながら逃げ始めた。里穂は足を引き摺りながらも“最初に投げたナイフ”を拾いながら次々と投げていく。そう、これが里穂の空間認識能力。里穂はエレノアを木陰に誘導しながら地面に散らばったナイフを拾う算段をしていたのだ。
しかしそれも長くは続かなかった。周囲のナイフを投げ尽くした里穂は動きを止めてエレノアを見た。
『…もう終わりよ。あたしももう限界だし…。あとは任せるわ…』
里穂は弱々しく息をしながらそう言って膝から崩れ落ちた。するとエレノアはその場から里穂に声をかける。
『最後のは危なかったわ。やっぱりあんたは強かった。ありが…』
パンッ!!
エレノアが感謝の言葉を言おうとしたその時だった。突然エレノアの鎖骨付近から血が吹き出した。
『えっ…?はっ…?』
バタッ
エレノアはその場に倒れた。エレノアは地面に伏せながら力無く里穂を睨む。すると里穂はニヤッと笑ってから口を開いた。
『…そこ、唯一射線通ってるのよね。知らなかったでしょ?』
『…くっそ……。あんたまさかそこに誘導させる為に……』
『正解…。でも…これじゃ勝ちとは言えない……わね……』
バタッ
里穂はそう答えてから地面に倒れた。エレノアはそれを見てから気を失った。そして二人は動きを止める。互いの身体からは大量の血液が流れ出していた。
しかし、辺りで戦う朝霧も女越も竜胆もそんな事を知る由も無かった。三人共他の戦いに目を移す余裕が無かったのだ。
そんな中で一人だけ、里穂のピンチに気付いた人間が居た。それはエレノアを狙撃した花怜だった。花怜の狙撃が敵に命中した場合、その報告を近くの仲間が無線で入れる約束になっているのだ。しかし未だに里穂からその報告は無い。花怜は急いで日向にその旨を伝える。
「帯市さん、行けますか?」
「…うむ。」
日向の言葉に帯市は静かに返事をすると、すぐに前線へと走り始めた。




