ウケツガレルモノ
ガタゴト…ガチャン……
俺は物音に目を覚ました。隣を見たがそこに花澤は居なかった。
「…ん?あれ?」
俺は眠い体を起こして部屋を見渡した。するとキッチンに居る花澤と目があった。
「起きたん?もうすぐ時間やで。」
花澤は俺の動きに気付くとそう言って笑顔を見せた。
「つくし先輩…起きれたんすね。何してるんすか?」
ガシャンガラガラ…
「わぁっ!ちょ、ちょっと待って!」
花澤は騒音を立てながら焦りの声を上げた。俺はゆっくりとベッドを降り、キッチンへ向かった。そこにはぐちゃぐちゃに散らばったキッチン用品が積まれていた…
「…料理下手くそなんすね。」
「う、うるさいわっ!」
俺は繋がった玉ねぎを摘まみながら顔を歪ませる。
「出発前にナツキにご飯作ったろうと思ったんやけど…これじゃあきっと体調悪くしちゃうよね…。ハルカちゃんみたいにパパっとは作れんかったわ。あはは…ダメやね、うち…。」
そう言って花澤は苦笑いしながら頭をかいた。
「腹減ったんで食うっす。」
「えっ…いや……」
特に腹は減っていなかったが、俺は花澤の言葉を無視してダイニングテーブルについた。すると花澤はモジモジと体をクネらせながらテーブルに黒い味噌汁とベチャベチャの白米を並べた。
「ごめんね…無理に食べんでええからね。」
花澤は俺の横に立って息を飲んだ。
自ら言ったものの…この見た目はなんだ?この味噌汁に関してはまるで泥汁だ。こんなんアニメの世界でしか見たことないぞ…?この後の相場は決まっている。俺はわかっていてそれに飛び込むのだ。覚悟は決まっている。
無理してでも食べるんだ!いけ!口の中に入れろ!花澤の悲しむ顔なんて見たくないんだ。
俺は震える手で味噌汁に口をつけた。
「……ん!?」
俺は目を見開いた。
「…どうかな?」
花澤は俯きながら俺をジッと見つめる。
「大丈夫っす。…いや、正確に言うと美味いっす。グロテスクなのは見た目だけだったみたいっすね。白米も普通にお粥としては美味いっす。」
「ホンマに!?やったぁ!!」
花澤はぴょんぴょんと跳ねて喜びを表現する。俺の偏見は見事に粉々に砕け散ったのだ。俺はある意味奇跡のその料理を食べきると、お茶を飲みながら花澤に声をかけた。
「何で突然料理なんてしたんすか?」
「実はな、戦闘の前はいつもうちが元気になるようにってハルカちゃんがご飯作ってくれたんや。だからうちもナツキの為に同じことしたいなって思ってなぁー。」
花澤はキッチンで洗い物をしながら答えた。俺は小さく頷きながら目線を落とした。
そういえば姉さんは俺の高校受験前や大学センター試験前も同じように手料理を振る舞ってくれたっけな…
こんな生活をしていても変わらなかったんだな、姉さん。その姿が目に浮かぶよ。
「ほないこか、ナツキ。」
後片付けを全て終えた花澤はエプロンで手を拭きながらそう言った。俺は貴重品が入った小さなリュックサックを手に取ると、既に玄関に向かって歩き始めていた花澤の後を追った。
ガチャ
俺は玄関の鍵を閉めてから廊下を見渡した。するとそこには月島の姿があった。どうやら同じタイミングで部屋から出てきたらしい。
「あっ美咲ちゃん!ちょうどええやん、一緒に行こっ!」
「…うん。」
月島は花澤に半分引きずられながら廊下を歩き始めた。…なんだか懐かしいな。最近すっかり第三小隊に染まっていたから、この光景はとても懐かしい。
「ほら、ナツキもさっさと歩いて!」
俺がそんなことを考えていると、花澤は俺の腕を掴んで引っ張り始めた。




