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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第二章 “痕に残る者”
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セカイノカベ

「…さて、全員揃ったな。それじゃ始めようか…。」


話始めた日向の口調は沈んでいた。明らかにいつもよりも元気が無い。俺だけでなく、この空間に居る全員がその姿に疑問を覚えていた。しかし誰もそれについて触れることは出来なかった。怖かったのだ。その原因が最悪の事態である可能性を肯定してしまうような気がしたから…。


「今回の相手はドイツだ。」


その予感は的中した。日向の言葉にメンバーたちはざわつき始めた。ドイツは現在世界ランク1位の強豪国だ。


「殺人事件が原因だ。ニュースでも見た人も居るかもしれないが、ドイツの世界的な女優が殺されたんだ。その容疑者が残念なことに日本の国会議員なんだとよ。ドイツは引き渡しを要求しているが日本側としてはそれを認める訳にはいかないっー事だ。」


続けて説明された戦闘の原因にメンバーたちはより一層ざわつき始める。


「…くだらねー。」


その中でも特に怒りを露にしていたのは第一小隊隊長の飯倉だった。飯倉は机に拳を軽く叩き付ける。


飯倉の言いたい事は痛いほどわかる。そんなものの為に俺たちが命を懸けて戦う必要があるのだろうか?本当にその国会議員が犯人ならば素直にドイツに引き渡すのが道理というものだ。


だが決まってしまっては降りる訳にはいかない。俺たちはそういう役割を担っている。どんなに不条理な事柄でも死ぬ気で戦わなくてはいけない。もし俺たちが戦わなければこれが引き金に戦争が起こるかもしれないのだ。


「戦闘種目は“トランスポート”。場所はカザフスタンの廃村で行うとのことだ。今回それぞれの配置は俺が決めさせて貰った。手元の地図を見てくれ。」


トランスポートとは5つある戦闘種目の一つである。200メートル間を開けて平行に並んだ両チームを一斉にスタートさせて、それぞれ直線距離で1キロ先の目標物を持ってスタート地点まで帰ってくるのが基本ルールだ。先に目標物をスタート地点に設置した時点でそのチームの勝利となる。


それだけならシンプルなのだが、もちろん妨害も目標物の奪取も容認されている。つまり、穏便にこの種目が終わることはあり得ない。戦闘は絶対に起こるのだ。


日向の説明を聞いてから手元の航空写真を見る。写真の真ん中には大きな長方形で赤枠が引かれている。その中にはそれぞれのメンバーの名字の一文字がバラバラに記載されていた。縦に見て長方形の右下には日本の国旗、左下にはドイツの国旗が印刷されている。


「まずスタート地点のディフェンスには俺と花怜と本田、帯市がつく。スタート地点から半径500メートル以内であれば花怜がフォローしてくれる。帯市は怪我人の救護を同時に行ってくれ。」


花怜は日向の言葉に小さく頷いた。どうやら今回の配置は小隊という枠では考えないらしい。まさに総力戦という訳か…。


「そしてドイツと日本のスタート地点の真ん中、ここが一番の激戦区になる。ここに朝霧先生と里穂さん、女越、竜胆の4人だ。このメンバーはスタートと同時に走り、ドイツ拠点を占拠してくれ。」


これがトランスポートの必勝パターンである。相手のスタート地点を占拠してしまえば絶対に勝てるのだ。だがそれは相手も同じこと。だからこそここに大人数を割いてくる筈なのだが…いくらなんでも4人じゃ少ないんじゃないか?


そんな俺の考えを読んでいたかのように日向は説明を付け足し始めた。


「但し、この4人は無理に攻めなくてもいい。あくまでもドイツの攻撃を止めることを目的に動いてくれ。こちらの強みである“オーバーアイ”を前面に押し出していくんだ。」


オーバーアイってなんだ?俺は目を丸くして首をかしげる。見ると周囲のメンバーの半分は俺と同じ反応をしている。そんな時、日向の隣に座っていた花怜が頬を膨らませてから日向の肩を力強く叩いた。


「痛たたっ!わかったよ!…花怜の“目”を前面に押し出すんだ。ハンドガンでスナイピングが出来るチームは世界でもうちだけだからな。」


イマイチ理解しきれなかった。花怜の目はどこか人とは違うのだろうか?周囲のメンバーは納得の表情をしていたが、俺と藤代は釈然としなかった。


「次に目標物までの直線1キロには4人を配置する。奥から飯倉隊長、松本、鳥海、菅野だ。4人は等間隔に散らばってリレー方式に目標物を持って帰ってくるんだ。もちろんこの4人はチームの中で足の速いメンバーを選出している。」


ん?俺って足速かったっけ?


先の戦闘で第二小隊に置いていかれた覚えがあった俺は瞬きを多くさせる。だがそんな事を質問する隙など無かった。日向は更に説明を続ける。


「そしてフィールドの中央に高橋、花澤、藤代の3人を配置する。中央の3人は臨機応変に対応してくれ。但し、一番の目的は目標物の運び屋4人を守ることだ。」


花澤は心臓に手を置いて目を瞑っている。まるで誰かに祈りを捧げるようなその仕草に俺は唇をギュッと噛み締めた。


「最後に美咲。…お前はレギナルドを止めてくれ、頼む。」


珍しく日向が頭を下げると、月島は少し遅れて小さく頷いた。俺はすぐに地図と共に配られたドイツチームのメンバー表の中にある名前を探した。


……

レギナルド rank SSS


俺はそのランクに目を疑った。月島を超えるランクの持ち主であるこの“レギナルド”という人間。日向の言葉から察するにただ者ではない…。


俺は小声で菅野へ話しかけた。

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