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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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チカラ

最新のトレーニング機器が揃うその場所は少し汗の匂いがした。元々無機質な施設にぴったりの場所。俺の見たこともない器具も沢山のある。そこには既に風間と月島の姿があった。


「おはよう。ナツキ、昨日は良く寝れたかい?」


風間はストレッチをしながら爽やかに朝の挨拶をしてきた。


「…おはよー。」


月島は続けて小さく呟く。


「おはようございます!あれ?つくし先輩は居ないんですか?」


時刻はあと5分で午前6時になろうかという所。辺りに花澤の姿は無い。


「あー…。またか。美咲、頼めるかな?」


「……わかった。いてくる。」


風間の頼みに、月島はゆっくりと立ち上がると小走りでトレーニングルームを出ていった。


「内線じゃ起きないんだよな、あいつ。」


風間は大きく溜め息をつく。二人きりになった。俺はどうしようか悩む。昨日のことだ。花澤に聞こうと思っていたが、風間でもさして問題は無いだろう。俺は意を決して口を開いた。


「あの、昨日資料室で…」


「その話は後でだ。」


俺の話は途中で風間に止められる。風間の視線の先には男が一人。やせ形の体系に痩けた頬。ゆっくりとトレーニングルームに入ってきたその男は、明らかに他のメンバーとは違う雰囲気を醸し出している。俺は急いで口を閉じた。


「おはようございます。さかきさんもトレーニングですか?」


風間は笑顔でその男に挨拶をする。俺も続けて小さく挨拶をした。


「ああ。」


一言だけ。たった一言風間にそう言うと、男は一人でウェイトトレーニングを始める。俺は少しムッとした。どうやらその表情が表に出ていたらしく、風間は苦笑する。


「あの人は榊一さかきはじめ。第四小隊、別名“カナリア”の隊長だ。あんまり他のメンバーとは関わりたがらないけど、団長は彼に絶対の信頼を置いているみたいだね。」


風間の説明に俺は納得する。オーラが違う。まるで戦う事を宿命付けられたような表情。余程の実力者なのではないかと思う。果たして榊のランクはいくつなのだろうか。そして何故あんなに体の線が細いのか。


その時、月島に連れられて花澤がトレーニングルームに入ってくる。花澤は眠い目を擦り、蛇行しながら歩いてくる。


「…おはよぉさん……。」


「はい、おはよう。つくし。」


風間はニコッと笑ってそう言った。だがその裏腹にある怒りが俺にはわかる。風間は怒りを表には出さない性格なのだろう。


「時間が勿体ないから、始めよう。まずはランニングから行くよ。」


朝のトレーニングは気持ちが良い。軽いランニングの後に少しのウェイトトレーニング。5分休憩した後にエアロバイクに跨がる。1時間程汗を流した所で風間は皆を呼ぶ。


「よし、今日のトレーニングはここまで。二人は午後のミーティングまでフリーね。そしたらナツキ、あっちの部屋に来てくれるかな?」


風間はトレーニングルームの奥にある扉を指差す。あの部屋には何があるのだろうか。風間の後ろについて歩き始めると、後ろから花澤もついてくる。


「つくし、もう解散だぞ?別についてこなくても大丈夫だ。」


「ぇえ?だってフリーなんやろ?別にうちが何しようとええやんか。」


「確かにそうだな。」


花澤はすっかり目が覚めたらしく、ニコニコと含みのある笑みを見せる。これから何をするのか?まさか新人扱き?かわいがり?そんな悪いイメージが頭の中でを駆け回る。


風間が扉を開けると、そこには柔道場があった。本物の畳が敷かれたその部屋は、井草の匂いでいっぱいだ。


「君の今の実力が見たい。そこにある武器を使っても構わないから、全力で来てみなさい。」


風間はそう言うと、その場に正座する。


「素手でも構いませんか?」


俺は自信があった。空手全国制覇の実力は伊達ではない。研修でも俺は負けたことがないのだから。


「…別に構わない。ならば私も素手でいこう。」


俺は風間に向かって構える。




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