シセン
落ち着いて息を吐く。意識がハッキリしてきた。座り込んでいたいた俺の横には日向の姿があった。
「…大丈夫か?」
日向は心配そうな顔をして俺の背中を擦る。俺の呼吸は段々と正常なリズムになっていく。
「っはぁ…。はぁ…。す…すみません。」
なんとか息遣いの合間に言葉を出す。日向は左手に持っていた水を俺に差し出す。
「飲むか?」
俺は落ち着く為にその水を受けとる。日向は少し安心したような表情を見せると、床に散らばった資料を一枚拾う。
「何を調べていた?」
「……姉のことを調べてました。」
「…そうか。」
ここで偽りを述べる必要はない。下手に取り繕ってもボロが出たら対処出来ない。それに俺はハルカの弟なんだから隠す必要もないだろう。花澤も言っていた通り、知りたいという気持ちは当然のことなのだから。
「一つアドバイスをしてやる。」
日向は散らばった資料を束に纏めながら話始める。
「お前の目的は知らねえが、ここは図書室じゃねー。どうやって次の戦いに勝つかを考える場所だ。俺たちは死線との境界線で生きている。甘く見てると死ぬぞ。」
ようやく息が整った俺にはキツい一言だった。確かに日向の言いたいことはわかる。ここは戦場の入口だ。俺は日本の代表としてここに居る。それぞれの戦いによって国の未来が左右されるのだ。それにどれだけの責任があるか、考えただけで身が震える。
「でも…」
それでも俺は黙っていることが出来なかった。日向の目を真っ直ぐ見る。
「…それでも俺は…真実を知った上で戦いたい。」
日向は俺から目を離さない。まるで俺の目から頭の中を覗かれているような、そんな気がした。
「…勝手にしろ。」
日向は吐き捨てるようにそう言うと、部屋を後にした。
資料室は一気に静まりかえる。俺の手にはペットボトルの水。日向は何をしに資料室に来たのだろうか。
時刻は既に10時を回っていた。不味い、そろそろ戻らないと明日のトレーニングに響く。俺の頭の中に渦巻く情報は一度凍結させる。これ以上一人で考えても今は答えは出ないだろう。ただ、竜胆という名前。これだけは確かめなければいけない。明日花澤に聞いてみようと決意した。




