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この壊れた世界でナニヲオモフ  作者: 政吉
第一章 “仮初めの平和“
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ミカタ

「先に部屋に荷物置いてきた方がええな。こっちや。」


花澤は徐々に歩くスピードが早くなる。里穂の件はもう大丈夫なのだろうか。残念ながら俺はまだ引きずっている。


「ここがナツキの部屋ね!うちの部屋は斜め右のあの部屋やから、何かあったらノックするとええわ。」


「わかりました。ありがとうございます。」


俺は花澤に軽く頭を下げると、目の前の扉を開けた。そこはまるで別世界。研修施設とは似ても似つかない程の豪華な設備が揃う。部屋に設置されているものはどれも最新の家電ばかり。窓は無いが、狭さをを感じさせないほど広い天井の部屋が3つもある。もちろんバス・トイレは別。しかもバスに関しては実家の風呂よりも大きい。


「マジかよ…。ちょっとしたマンションだよ、こりゃ。」


俺は意識せずに言葉をあげる。そして荷物を置いてベッドに腰掛ける。部屋を改めて見渡して笑みが溢れる。


「ふふっ。すごいやろ?」


死角からのいきなりの声。俺は思わず声を上げて驚いた。


「無用心やなあ。ドア、開けっ放しやったし。」


花澤はそう言ってダイニングテーブルの椅子に座った。


「懐かしいなあ。よくここでハルカちゃんとご飯食べたわ。うちらは歳も近かったし、よく一緒に話してたっけなあ。」


花澤は遠くを見るような目で懐かしむ。俺は驚いて花澤を見る。


「ここは…姉の部屋だったんですか?というか、いいんですか?姉の事を俺に教えるのは禁止されてるんじゃ…?」


「ここには団長は居らんやろ、大丈夫。…うちね、流石にハルカちゃんの事を全部あなたに教えないっていうのはどうかと思うんや。ハルカちゃんがうちらと過ごしてきた…、ううん、生きてきたこと。何をして、どうやって死んでいったのか。うちがナツキやったら絶対知りたいと思う。だから君はここに来たんやろ?」


花澤は天井を見つめながら足をブラブラと前後に動かす。俺は何も答えられない。


「それは隊長も同じや。わかるやろ?だから隊長はナツキに会いに行ったんや。でもな、それでもうちらにも言えることと、言えないことはあるんや。それはうちらがチームとして活動してる以上、仕方がないことや。その先は、あなた自身が調べて、自分で知るかを判断すること。但し、ナツキが思っている程真実は綺麗やないで。それ相応の覚悟はせなあかんよ。」


花澤はサッと立ち上がるとこちらを悲しそうな目で見てくる。俺は突然の話に困惑したが、怒りの感情は無かった。


このチームで俺以外全員が敵だと思っていた。しかし、ちゃんと俺を理解して協力してくれる人は居た。それだけでも充分だった。少し目頭が熱くなる。俺は花澤に深く頭を下げる。


「まあ、うちは何があってもナツキの味方や。なんてったって教育係やし、ハルカちゃんの弟やからな。せめてナツキの望みが叶うまで、私はあなたを…」


段々小さくなる声に、最後の文章は聞き取れなかった。だが花澤のその表情に、聞き直すことはしなかった。


「…そや!資料室に案内する前に食堂いかへん?うちお腹すいたわ。今日は確かハンバーグ定食の日やったなあ。」


花澤はコロッと表情を変える。その緩急に俺は力が抜けた。だが確かに腹は減っている。時計を見ると、短針は既に7時に近づきつつあった。


「はい、花澤先輩!俺もお腹空きました。是非ご一緒させてください。」


「もう、固っくるしいなぁ。つくしでええよ。みんなもそう呼んでるし。あと、敬語も別にいらんわ。うちも使うの苦手やから。」


姉と仲が良かったというのもわかる。俺もこの人が気に入った。この屈託のない笑顔と裏表の無い性格。誰からも愛されているだろうと思う。だが思えば思うほど、これからこの人と一緒に戦闘という名の殺し合いをすることが想像できない。花澤は一体なぜこのチームに入ろうと思ったのだろうか。ふとそんな事を考えたがそっと胸の中にしまった。





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