ココデハ
その時、聞き覚えのある声が部屋に響いた。
「金は貰える額が違うのか!?初耳だぜ!」
竜胆が第一小隊の隊員に詰め寄る。
「ああ、そうだよ!うるせぇな!!お前はまだランクが一番下だから貰える額が少ない。とは言え、命を賭けて戦ってるんだ、最低でもそれなりの額は入るさ。」
第一小隊の男は竜胆を既にコントロールしているようだ。
「お前はどうなんだよ?その“ランク”ってのはいくつなんだ?」
竜胆は男の肩に手を回しながら聞いた。馴れ馴れしいなんてものではない。彼らは日本の代表なのだ。流石に敬語を使うべきだと思うのだが。
「人のランクよりも、金が欲しいなら自分のランクを上げることを考えるべきだろ。気にすることじゃない。」
男は竜胆の手を振り払い、少し苦笑いする。俺は同期として少し恥ずかしく思うと共に、なぜ自分がこんなやつに負けてしまったのかと自責の念に囚われる。花澤は俺のそんな姿を不思議そうに見ていた。
「…ん?ああ、すみません。ちょっと気になる話が聞こえまして。ランクってなんですか?研修で習わなかった項目なので…。」
俺は花澤に気付くと、すぐに話を反らした。確かにランクの事も気になる。俺の苦悩など悟られないならそれでいい。
「あんなやんちゃな子が首席なんやね。…松本君も大変やなあ。まあ、ええわ。そか、ランクのことね。ランクっていうのは、毎回の戦闘競技における功績によって分けられるの。それは国連の委員会が決めてるから、詳しい評価基準はわからないんやけどね。ランクはC~SSSまでの12階級あってな。まあ簡単には言えば、高いランクの人ほど活躍してるってこと。これは余談やけど、もし戦場でAランク以上の人と会ったらすぐ逃げた方がええわ。」
花澤は真面目に説明してくれた。俺の苦悩は簡単に悟られてしまったが、いい情報を知れた。これは面白い。果たして自分の今の実力がどれぐらいのランクなのか気になってきた。
「戦場で会ったらって…。相手のランクを知るにはどうすればいいんですか?申告してくる訳でもないでしょうし。」
「うーん。相手のランクはね、一様資料では貰えるんやけどね。写真とか付いてない名前だけのリストやから、わからんと思う。…うーん。そやなあ…。あとは首に下げとるドックタグっていうキーホルダーみたいなやつにランクは書いてあるわ。ま、これも普段は服のなかに隠しちゃってるから、見えないんやけどね。」
花澤は難しい顔をする。これでは戦場で合ってもすぐにランクを判断することは出来ない。
「最初の内はわかる範囲で教えるから、戦いの時はうちから離れないようにしとってね!」
答えになっていない答えに納得は出来なかったが、理解は出来た。するとここで、二つの好奇心が沸いた。一つは、姉のランクが当時いくつだったのだということ。もう一つは花澤のランクがいくつなのかということだ。前者に関しては教えて貰えない事が既に確定しているが、後者は教えて貰えるかもしれない。俺は質問しようと花澤を見た。だが、先程の竜胆の姿を思い出す。あれと同じ質問をするのは嫌だ。俺は開いた口をグッと閉じる。
「どないしたん?」
花澤は俺の顔を再び不思議そうに見る。
するとその時、日向が声をあげた。
「とりあえず、今日は解散にしよう。新人たちに教えることが多過ぎてミーティングにならないし。あ!明日の外出希望者はちゃんと許可証を俺に提出しろよ。忘れたら罰則だからね。んじゃ解散。」
日向の言葉に、暇そうにしていた他の小隊のメンバーは立ち上がる。すると、部屋を後にする隊員の中に、明らかに中学生ぐらいの女の子が混じっている。俺は驚いて声をあげた。
「花澤先輩!なんで子どもがここに居るんですか!?ここは秘密組織なのにあんな子が……」
俺の口は花澤によって押さえられる。花澤は焦りながらその子を見た。女の子は花澤と目が合うと、ゆっくりとこちらに歩いてくる。