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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: 烏丸今出川

 脳裏から離れないあの気味の悪い無数の蟲…。後にも先にもあんなことを経験することは二度と訪れないだろう。いや、訪れてもらっては困る。

8月末日、大学が休みになり僕は右京区の渓谷で釣りをしていた。釣り自体は幼少のころから嗜んでおり、まあそこらの自称釣り人には負けない自信がある。特に渓流の釣りにおいては―。

某掲示板に嘘かまことか、なんと天然の虹鱒が釣れるポイントがあるとかないとか。そんな書き込みを見たのが昨日の深夜2時。そして今釣り場に向かっている僕の時計は深夜3時を指している。

 論文を提出し、しっかり安心しきっていた僕は気分が高揚していたのだろう。深夜3時に渓流に、しかも一人で釣りに行くバカがいるだろうか、いやいないだろう。ただ一人僕を除いては。

 悪路をスクーターで走り、ネットの書き込みにあった場所を目指す。峠を下りいよいよポイントに近づいてきた。

「あった。ここの階段を下りてと…」

峠の少し広い道に面してけもの道のような階段がある。ここを下りると例の釣り場につく。

いざ天然の虹鱒をわが手に。そんな意気込みで僕は軽い足取りで階段を下りた。

「お―。こりゃすごい。いかにもって感じだ。」

深い森に囲まれた中、開けた場所があり、川のせせらぎが心地いい。ひぐらしの鳴き声がまた妙に心を躍らせる。

いざ釣りを始めてみるとものの数分でニジマスを釣ることが出来た。まさに秘境。さすが某掲示板と一人感心していた時だった。

「ギ…ギギ…ギ…」

背後の森の方からまるで木の枝に何かをぶら下げて揺らしてるような音が聞こえた。

「動物か何かかな。ここいらじゃサルも珍しくないけど」

妙な好奇心があった。誰かが呼んでる気もした。そんなはずはないのに。

「ん、なにか木にぶらさがってるな。サルにしてはデカいな」

右手に持った懐中電灯で物体に向かって歩を進める。対象物を照らした瞬間、目の前が真っ暗になった―。というより蠅がいっせいに宙を舞った。無数のハエ、蛆。

「あ…あ…」

言葉にならない悲鳴が喉を鳴らした。異様な、異臭を放つ人のような物体がそこにあった。そう、首つり自殺。死後は不明。腐敗が相当進んでいるのだけは確かだ。

「なんで…」

死体の肉体を貪る蟲、蟲、蟲。ムカデや得体の知れない蟲が腐敗した肉塊を渦巻いている。ああここは地獄だ。

僕は携帯電話をポケットから取り出し110をダイヤルした。そして死体の目が腐り落ち、孔からムカデが這いずりだしたと同時に激しく嘔吐した。


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