Episode 53
「ほら、言ってみてよ。」
ルークのさっきまでの恥じらいはどこへ行ったのだろうか。ルークの顔、悪魔の笑みにしか見えない!ルークは私の長い髪を掬ってキスを落とす。そのまま私の顔の方へと近づいてくる。恥ずかしさに耐えきれなくなって、思わずそっぽを向いて
「いじわるっ!」
ルークからは一瞬だけ遅れて反応が帰ってきた。
「ははっ、ごめんって。」
ルークの大きな手が私の頭を撫でる。目を閉じて、それを心から堪能する。
(暖かくて、安心する。)
そして、ルークの方へ向き直す。ルークはまだ私の頭を撫でてくれる。
「あっ、やっとこっち向いてくれた。」
ルークはそれだけで嬉しそうだった。
「あっ。」
ルークの妨害と意地悪ですっかり本題に入るのを忘れてた。
「どうしたの?」
まぁ、でもルークの犬みたいなかわいい姿が見れたからいいか。今も、頭の上に犬耳が見えてるし。
「私も、帝国に連れて行って。」
やっぱり、ルークは豆鉄砲を食らったような表情だ。まぁ、前に会ったときに”遠距離恋愛になるね”なんて話をしてたんだし。あの日、私はルークが頭から離れなかった。本で読んだことがあった。そういうことを”恋”というのだと。それでも、打ち明けたばかりのお父さまの元を離れるのには抵抗があった。だから、お母様に相談しに行っていた。そして、もう帝国に行く準備はすべて整っている。あとはルークの許可を得るだけ、といっても”嫌だ”と言われてもついていくんだけど。
「えっと...もう準備は済んでるの?ラファのお父さんからの許可は出てるの?」
ルークはなぜか口元を隠しながら私に質問してくる。
「当然!すべて終わってるし、お父さまからの許可も頂いているわ。私を誰だと思えってるのよ!」
「う〜ん。無自覚天然?」
「天然じゃない!」
まったくもう。スキを見せれば容赦なくからかってくるんだから。でも、ルークのおかげでこんなに穏やかに過ごせているのよね。今も学園の時も。だからこそ、私はルークのことを好きになったんだと思う。
「で、連れて行ってくれる?」
ルークの顔は口角が徐々に上がり、目尻が細くなっていく。気づけば、ルークは立ち上がって私を抱えあげていた。
「もちろん!当然に決まってるよ!」
私の足が地に着くや否やルークは私を思いっきり抱きしめてきた。それに合わせて私もルークの背中に腕を回した。ルークは私よりも背が高くて、私の体がすっぽりと入ってしまう。ルークからの匂いはお日さまで心地良い。そして、ルークのサラサラな髪が私の顔をくすぐる。
「うっ、ルーク苦しい...」
「あっ、ごめん。」
やっぱり、騎士としても鍛えているルークの思いっきりは力が強すぎて苦しかった。でも、離れるかと思ったけど、そのまま緩めるだけでルークの腕はまだ私の背中にある。と、ルークの吐息が私の耳にかかる。なんか、ゾワゾワして変な感じがする。
「ラファ。好きだよ。愛してる。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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