Episode 47
「そう...か。だが...」
お父様の表情は昨日みたいに徐々に暗くなっていく。悲しみを混ぜながら。思わず、お父様から目を背ける。
(ううん。勘違いしてはいけない。この表情に意味なんかないんだから。今はお父様の愛情を求めなくてもいい。私の居場所は他にあるんだから。)
そう思い、隣にいるルークを見る。ルークが私の手に被せた手は私よりも大きく、剣の訓練を行っているからか、ゴツゴツしていて、温かい。ルークが隣にいるという事実が私の胸に大きな幸せを与えてくれる。
「他になにか懸念されることでも?」
意気消沈しているお父様にルークはさらに問いかける。お父様がなぜこんなにも私たちの婚約に反対するのか、意味がわからない。家門が大事なお父様にとってこの婚約は喜ばしいことなんじゃないの?反対する要素はさっき全部ルークが説明したじゃない。私とルークが婚約すれば、帝国の皇妃を生み出した家として、体裁も守られる上、王国では良い待遇を受けられるだろうし、バックに帝国がついているという事実が家の影響力をさらに上げるはず。この婚約を断ってしまえば、他に来る縁談はあまりいいものではないだろうし、私は自由に結婚相手を決めることができるから、平民と結婚する可能性だって出てくる。そうなったほうが、家門にとって悪影響なんじゃないの?
「....。」
お父様は何かを言おうとしてはその口をつぐんでしまう。お父様が何を考えているのかがわからない。そこに、今までにこにこして黙ったままだったサムが急に呆れた表情に変わり、
「旦那様。前にも言いましたが、素直になられたほうが賢明ですよ。このままだと、ラファエラお嬢様は帝国に行って里帰りすらしない、なんてことが起きますよ。」
いつものサムとは似て似つかない声でお父様に警告をする。前にもお父様に同じようなことを言っているけど、いつまで経ってもその真意はわからない。隣にいるルークは面白がっている気がする。だって、さっきまでの笑みと違うし、何より笑いをこらえて肩が揺れているもの。お腹まで抱えちゃってるし。もう、何が面白いんだか。
「サム...さんでしたっけ。私たちはお邪魔なようなので、一旦退出しません?」
声にはまだ抑えきれていない笑いが乗っている。というか、この状況で私たちを置いていくの?!
「そうですね。此処から先は親子水入らずということで。旦那様。本当に今日が最後になりますよ。」
ちょっと、サムまで!私も一緒に退出したいんだけど!だって、私はお父様の許可なしにでも婚約できるんだから、この場を立ち去っても問題ないでしょ!決して言葉には出さないけど。だって、言葉にしたら...あれ、なんで言ったらダメなんだっけ?考えを張り巡らせていると、誰かが私の肩に手を乗せる。その方向に向いてみると、
「大丈夫だよ。ラファ。ラファもお義父様に言いたいことがあるなら、素直に言ったほうがいいよ。今だったら、ちゃんと伝わるから。」
ルークはそう私に諭す。お父様に言いたいこと...
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