番外編 4
そして、ラファ視点ではありません。(多分、すぐわかる)
(もう、もう、何なよ!なんでみんなしてあいつをかばうのよ!かばわれるのは、私の方なのに...)
一人の少女が王宮の通路で爪を噛み、ギリギリと鳴っている。もう片方の手ではスカートの裾を掴み、ヒールなのにズシズシと音を鳴らして歩いている。少女はこの上なく、イライラしている。すべてが彼女の思い通りに行かず、むしろ逆にどんどん暗闇の中に落ちていっているからだ。理由は彼女にはわからない。
(この世界は私が中心なのよ?!脇役どもは私に大人しく従っておけばいいのに、それなのに!)
本来なら、こんな姿を他に見られるわけにはいかない。だって、この少女の振る舞いは仮にも公爵令嬢とは思えない。しかし、今日の王宮は人がいなくて、静かなものだ。王宮ならもう少し人がいても良さそうだが、幸いラファエラ嬢の事件によって人が事件調査に向かっている。いつもなら、高い声なのに人がいないせいか、声が太く、低い。
「あいつ、あいつ、許さない!」
少女の瞳はいつものようなきれいで愛らしいサファイアではなく、醜い魔物のような瞳だった。
◇ ◇ ◇
私は昔からいつも世界の中心だった。みんなは口を開けば、私を褒めてくれた。私が何をしても、お父さまも、お母様も、使用人もみーんな私に「かわいいね」と言って褒めてくれる。そうよ。私は何をしても許されるのよ。
私も私は素晴らしい人だと、そう思う。身分も公爵令嬢と王族を除けば、最高の位だ。しかも、この上なく美人だ。私と釣り合う男なんてそうそういない。私にふさわしいのはこの国の王妃くらいだ。それ以外のやつに王妃が務まるわけがない。あの時まではそう思っていた。
しかし、私が8歳になったときに、当時の10歳の人たちが受けた魔力判定の1ヶ月後に私のプライドはズタズタに崩れた。”無能”の象徴とも言える無属性の少女がこの国の一番の男と婚約した。指輪の所持者とはいえ、あんなやつが王妃に務まらないわ。あの人が王妃になって困るのは王家よ。そんなことはすぐにあのお方たちも気づくはず。そうして、みんなこう思うわ。王妃にふさわしいのはこの私ってことに。ちゃぁんと学園で思い知らせてあげるわ。
このときに、黒いもやがこの少女の心の中に入っていっていた。そうして、少女のラファエラを恨む心はどんどん大きく、笑顔の奥にひそむ不気味さを拭いきれていなかった。少女が10歳になった頃、魔力判定で私は上位属性である聖属性な上、魔力量も高い。このことが、少女の恨みや嫉妬心などのネガティブな感情はどんどん増幅されていった。
その後、学園に入学してフランヴァート王太子殿下よりも少女にふさわしい男(と少女が自分で思っている)を見つけることになるとは思いもしなかった。
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