Episode 43
あの思い出したくもない事件の日から、なんだかんだ3日が経っていた。
フランヴァート王子殿下が起こした事件は、周りに多大な影響を与えていた。一つはフランヴァート王子殿下の廃嫡が次の日には正式に発表された。通常なら、廃嫡が決定してからも、数日は審査や書類などで少なくとも1週間はかかるはず。なのだが、フランヴァート王子殿下が事件、しかも侯爵家の令嬢である上、指輪の所持者を襲おうとしたことが国内外にすぐに知れ渡ると危惧した国王両陛下が、即刻行動に移したそう。そして、事件を起こした張本人である、フランヴァート王子殿下はしばらく療養した後、北の地に幽閉されることになったそう。
私と婚約破棄した当日にでも婚約を結びたいと言っていたアグネス嬢は以前までのフランヴァート王子殿下への気持ちが嘘だったように、今は会っても冷たく反応しているらしい。心の頼みの綱であっただろう、アグネス嬢に振られたことでフランヴァート王子殿下は意気消沈しているそうだ。以前、フランヴァート王子殿下は
「アグネスは俺のことを”王太子”としての肩書きじゃなくて、”俺”自信を唯一見てくれる存在だ!お前と違ってな!」
と吐き捨てられたことがあるけれど、一番フランヴァート王子殿下の肩書きを見ていたのはアグネス嬢な気がする。私としても、”私の気苦労を返せ!”って感じだったけど、それを恨んでも仕方がない。
そして、シェルタプリモの後継者は現・国王陛下の弟に決まった。あのお方に一度夜会で会ったことがあるけれど、とても常識人で聡明であったことをよく覚えている。確か、既婚者で息子さんもいるそうだ。会ったことはないけど。
そして、私は...
「お嬢様、ルーク皇太子殿下の告白の返事、どうするんですか?」
私はあの事件のお詫びとして、貴族でありながら、自由結婚が認められた。この国では魔力量を重視することが度々あるため、貴族が未婚の場合、より多くの魔力量を持つ子孫を残せるように、王命で結婚をさせられる。しかし、それが免除となった。ちゃんとお父さまの許可も取ってあるそうだ。だけど、私に好きな人なんていない。そう、マリに話していると先ほどの回答が返ってきた、というわけだ。
「うーん。ちゃんと断ろうと思ってるよ。私を好きなのはありがたいけど、ルークと私じゃ釣り合わない。」
私の腰辺りまである長い髪をといでいたマリは急に私の目の前にやってくる。いつもと違う真剣な、顔。
「では、私が王宮の友達から聞いたお話をします。それでも”断る”という気持ちが心変わりされないようでしたら、ルーク皇太子殿下に断る旨を伝えてください。」
ルークに関わる話?マリより私のほうが知っているはずなのに。
「アグネス嬢がフランヴァート王子殿下を振ったことはご存じですよね。」
「もちろん。」
その話で今、社交界で話題なんだから、嫌でも耳に入ってくる。
「そのアグネス嬢が今、ここぞとばかりにルーク皇太子殿下に猛アタックしているそうです。」
「えっ。」
驚きを、隠せなかった。驚きと嫌悪の気持ちが同時に湧き上がってきてドロドロした感情が混ざりあって気持ち悪い。どうして、アグネス様がルークに...?
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