Episode 38
殿下は何を言っているの...とりあえず、早く何か信号を出さないと...このままだと、フランヴァート王子殿下に襲われてしまう。そんなことが起こってしまったら、今までの苦労はすべて水の泡になってしまう。今日、やっとの思いで婚約破棄したというのに...
「そんなに、怯えた顔をしなくていいよ。これから、君が良くなることしかしないんだから」
殿下の冷たい手が私の頬をそっと撫でる。気味が悪いせいで、全身に鳥肌が立ってしまう。一刻も早くここから逃げ出したい。何か、何かいい方法はないの?!こうしている間にも殿下は私が逃げ出さないように手足を縛っているのに!暴れても、殿下に強い力で押さえつけられてしまう。あっ。指につけてある指輪にふと触れる。これなら...!
「ラファ、何をしているの?」
しまった、殿下に気づかれた?!殿下は私の小指にある指輪の存在に気づく。バレないように隠そうとするけれど、無駄な抵抗に終わってしまう。フランヴァート王子殿下は白色の魔道具の指輪を私の小指から取る。
「ん゙っ、んー!」
しかし、そんな言葉がフランヴァート王子殿下に伝わるはずもない。彼は私の叫びを無視して、
「ねぇ、ラファ。これ、ルークのやつからもらった指輪?」
違う。というか、なんでフランヴァート王子殿下の口から、ルークのことが出てくるの?これはみんなからもらった魔道具の指輪。今、フランヴァート殿下に無駄な刺激を与えると、何をされるかわからない。必死にルークからのものではない、と横に首を振る。それの反応に満足したのか、
「そう、よかった。あいつは学園の時からずっとラファのことが好きだったんだよ。もしかしたら、ルークにラファを盗られるかもしれない。そんな焦りから、アグネス嬢には恋人のふりをしてもらっていだんだよ。」
うそだ。
「それでも、ラファは俺のことを気にもしなかった。どれだけ罵詈雑言を浴びせられても、俺のことじゃなくて、ルークやアレスタのことばかり、意識が占められていた。俺はどうにかして、ラファの意識をすべて俺に向けてほしかった。」
違う。あなたは、そんな人じゃない。私のことが好きだからじゃない。ただ、国王の座が好きなのよ。それを私が好きだとすげ替えているだけよ。そんなはずないと弱々しいが、首を横に振る。フランヴァート王子殿下の瞳の中に宿る愛情は本当のように思えてしまう。絶対にそんなはずはないのに。頭でわかっていても、信じてしまいたいと思っている私もいる。愛情に飢えているの、私?
「卒業パーティーで婚約破棄を宣言しても、君は俺に対して何の感情も抱いていなかっただろう。だが、それでもいい。それでもいいから、俺の側にいてほしいんだ。」
フランヴァート王子殿下の手が私の胸元に触れる。さっきまでの気持ちは一瞬にして吹き飛んで、一つの環状が私の中を占めていく。気持ち悪い。体がガタガタ震えてしまう。嫌で、嫌でどうにかして、逃げ出そうとして、叫んでみるけど、縄が邪魔で喋れない。足をバタバタさせるけど、フランヴァート王子殿下を蹴飛ばすこともできない。早く手を除けてほしいのに、手が縛られていて、抵抗できない...!誰か、誰か早く私を助けて...!
「ラファ!」
ルーク...!さっきのが、伝わったの?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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