Episode 35
「まぁ、あいつらの計画が頓挫したんだったらいいか。」
ルークの顔にほころびた笑顔がこぼれる。それにプラスしてなぜか、意地の悪そうな感じがするのは私だけだろうか。ルークみたく、私は人の表情から感情を詳しくは読み取れないからわからないけど。
「ちなみにその計画ってなんだったの?」
「盗み聞きしたもの、というか本人たちが大声で喋っていた内容だから、正確ではないかもしれないけど...フランとアグネス嬢はラファをお茶会に誘って、ラファを正妃にしてアグネス嬢が側妃にならないかって誘おうとしてたらしい。」
この期に及んでまだそんなことを考えていたのか...呆れてものが言えないわ。本当に、どこまで勉強もせず、社交界も出ていなかったのかしら。普通にしていたらそんな考えは浮かばないはずなのに...
フランヴァート王子殿下じゃなくて、ルークが婚約者だったらなぁ。って何考えているのよ?!私?!
こんな気持ちをルークに悟られないように、早口で
「確かに、手紙の中にお茶会を誘う文言が書いてあったわ。」
と言ってしまう。逆にバレてしまいそう!
「たぶん、それに気づいた国王夫妻が今日ラファを王城へ来るようにしたんだろう。」
よかった。ルークに何も気づかれてないみたい。やっぱり私の心は読んでいないのね。それはそれで怖いけど。
国王夫妻はすべて、わかっていたんだ。本当に、あのお二方は側近を使うのがお上手だわ。いいえ、国王両陛下の行動が素晴らしいんだわ。周りを惹きつける力がある。だから、皆がお二方が指示する前に動いている。
「ほんとに、感謝してもしきれない。王妃殿下には私が小さい頃からよく面倒を見てもらっていたから...」
王妃殿下とお母さまは親友だったらしい。王妃殿下が王家に嫁いだ後も、たびたび二人でお茶会をしていたそうだ。そして、私はお母さまにとても似ているらしい。それもあってか、よくかわいがってもらった。ときには優しく、ときには厳しく、私を本当の娘のように扱ってくれた。そのおかげで、私はあんな家庭の中でちゃんとした教養を身につけることができた。不意に横に目をやると。
あっ、このお花。よく王妃殿下とのお茶会のときによく飾られていた花。小さい花弁だけど、たくさんついているからきれい。名前はわからないけれど、このお花の花言葉は「幸福」、「無垢の愛」って王妃殿下に教えてもらったわ。
王妃殿下との思い出を振り返っていると、
「ラファ...」
心から漏れたその言葉は小さいけれど、そこに優しさがあった気がした。ルークの整ったきれいな顔がどんどん近づいてくる。さっきまであんなこと考えていたから、ルークのきれいな瞳に見つめられるとすごく緊張する。私とルークの鼻があたるか、あたらないかのところで後ろから
「お嬢様〜!ってルーク皇太子殿下?!えーっと、お邪魔でしたか?」
びっくりして、咄嗟にルークから離れてしまう。やばいやばい、私の顔が暑すぎる。心臓の鼓動もいつもよりもめちゃくちゃ早い!早く収まれ、私の心臓!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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