Episode 32
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私の言葉の力は、言葉を失ってしまった二人と、感嘆を受けたのか拍手をする人に分かれた。私は言葉を言い終えた後に、今まで肺に入っていなかった空気が一気に入ってくる。酸素が私の脳に到達したときに、私は私の発言を思い出して、頭から何かが引けていく。手先もどんどん冷たくなっていく。
王妃殿下は
「さすが、ラファエラね。」
王妃殿下は持っている広げていたセンスを閉じる。王妃殿下のこの行為は、肯定という意味なのだが___私のことを褒めるけれども、王族不敬罪で訴えられてしまわないかと心配だ。そんな様子の私に、国王陛下は察してくれたのか
「安心してくれ。不敬罪などで問立てることなぞない。そこのバカ息子と違ってな。」
そういって、私の後ろにいるフランヴァート王子殿下を睨んでいたのだと思う。国王両陛下はどこまで知っているのだろう。私はフランヴァート王子殿下に学園在学中に何度も
「不敬罪だ!」
と言われていた。しかし、ご自身の評判を下げたくないのか、いつもその場にいるのはアグネス嬢と彼の側近のみだ。そういうところだけはちゃんと頭が働くから、陰湿すぎる。今思い出しても、怯えで身震いをして、手汗をかいてしまう。学園に入学するまでは本当にお互い恋愛感情があったかと言われれば別だが、戦友のように思っていたのは私だけだったのだろうか。
「ラファエラ嬢、本当にすまなかった。最後にもう一度聞くが、フランに心残りはないな?」
そう言われ、もう一度フランヴァート王子殿下に視線を送る。以前のような傲慢な態度と違い、私にすがるような瞳でこちらに訴えかけてくる。
「ラファ...」
とかすれたような甘えるような甘い呼び方も添えて。彼の顔には怒られているけど、必ず許してもらえる。そう思っている気がする。
しかし、そんなことを言われても私の心は変わらない。前のようにただ、フランヴァート王子殿下に怯えるような私じゃない。この間の魔帝会議で確信した。私は一人じゃない。私の右手の小指にある指輪に手を添える。大丈夫。
「フランヴァート王子殿下に未練も心残りもありません。あの方がおっしゃったように、婚約破棄をしてください!」
両陛下をまっすぐに見つめる。
「そう。本当に残念だけれども、我が息子ながらあなたにたくさん我慢させてしまったわ。王妃なのに、自分の私情を挟んでしまって申し訳ないわ。今思っても意味が矛盾してしまってるのに...」
こちらこそ、フランヴァート王子殿下に寄り添えなくて申し訳ありません、その一言は喉の奥につっかえるだけで声として出すことはできなかった。
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