Episode 31
「王妃殿下の身分が高いからですか?」
その答えは一番言ってはダメなもの...王妃殿下の周りに吹雪いている雪はどんどん量を増していく。そして... アグネス嬢の隣にいるフランヴァート王子殿下はこの世の終わりのような顔だ。頭の弱い殿下でもさすがに、まずいことはわかっているのか。
反対にアグネス嬢はそのサファイアの瞳には強い確信を持っている。その答えが正解だと思っているのだろう。私のほうが優秀だと言いたいのだろう、私の方を見て、ドヤ顔だ。
しかし、その顔はすぐに絶望した血の気の引いた顔に変わっていった。
「ブランホリー公爵家ではまともな教育をさせてないのかしら。」
「えっ、」
こんな声を出しているということは、本当に知らなかったのか。どれだけ、周りの人に持ち上げられて過ごしてきたんだ。逆に気になる。
「私は子爵家出身よ。」
「へっ?」
アグネス嬢の目は点になって、王妃殿下の言っていることを理解できていなさそうだ。
そう、王妃殿下は子爵家出身だ。私たちと同じく、シェルタプリモ学園の卒業者である。補足しておくと、王妃殿下はアグネス嬢同様、聖属性で魔力量も高い。おそらく、アグネス嬢よりも。
この王国の重鎮の一部には身分、魔力、そして何よりも学力と政治力の4つを重視している。王妃殿下は身分でこそ劣りはしているけれども、学力では学園を首席で卒業しておられる。王妃殿下も現・国王陛下と交際していた際に、重鎮たちからひどく、非難を浴びて、国王陛下が別の婚約者を据えられるところだったのだ。
しかし、王妃殿下が当時悩まされていた、王都近くの川の氾濫に対する予防策を打ち出した。これが画期的なもので、重鎮たちに認められたのだ。とまぁ、だいぶ王妃殿下の経緯を説明するとこんな感じだ。
「では、ラファエラに聞いてみようか。なぜ、フランとアグネス嬢が結婚することはダメだと考える?フランが王子だから、というのは考えずに率直な意見を言ってくれ。」
難題すぎる...どうしよう...
「私に答えられない問題をラファエラ様が答えられるとは思いませんわ。無属性ですしね。」
先ほど、王妃殿下に失わされた顔色はすでに戻っていた。その度胸にある意味感心する。だけど、それ以上にアグネス嬢のトゲは私を苛立たせ、理性を失わせる。このときに、無意識のうちに着ているドレスを強く握りしめていたらしい。
「フランヴァート王子殿下は!」
自分でもわからないくらい大きく叫んでしまった。しかし、もう一度大きく息を吸うと、もう自分では止められない行き場のない怒りが言葉の全てに乗っていた。
「勉強ができません!王としての大事な部分が欠陥しております。だから、頭の良さと貴族の均衡バランスであてがわれた婚約者が私でした!!それらをアグネス嬢が私の代わりとして婚約者になることなんてできないからです!」
私の言葉に二人は唖然としている。しかし、国王両陛下が考えていたことと私の考えは一致しているはずだ。フランヴァート王子殿下のいない非公式のお茶会で何度もお二方のこのようなぐちを聞いてきたのだから。
そして、唐突に理性が戻り、やらかしてしまったことに気づいて、身体中から冷や汗が吹き出ているのを感じた。
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