Episode 30
今までのエピーソードを加筆修正しています。読まなくても、問題はないので安心してください
「まさか、自分の息子に夢を阻害されるなんてね。」
しばらくして、皮肉が込められていることに気づいたフランヴァート王子殿下の顔は見ていられないほどにぐちゃぐちゃだ。両思いであるはずのアグネス嬢ですら、フランヴァート王子殿下の様子を見て、ちょっとずつ動いて距離を取っている。こういうときこそ、殿下を支えるんじゃないのかしら。アグネス嬢の顔はとても”殿下のことが好きですっ!”と言っていたようには見えないけど。
「そんなつもりじゃ...あ、愛する人と結婚してはダメなのですか?!しかも、アグネスは公爵令嬢ですよ?!」
もう、フランヴァート王子殿下は泣きじゃくっている。以前、”汚い”と言っていた、膝を床につける格好になっていることに本人は気づいていない。そんなことも気にする余裕がないほど、両親になんとか許してもらおうと言い訳を考えているのだろうか。
しかし、フランヴァート王子殿下の浅はかな考えは簡単に打ち砕かれてしまうだろう。
「私たちとしては、愛する人と幸せになってほしいと思ってますし、身分としても申し分はないと思っています。実際私たちも恋愛結婚ですし。」
国王夫妻は大恋愛の末、結ばれている。この国では有名な話した。だけど、フランヴァート王子殿下はそれすら知らない気がする。
「では、なぜダメなのですか?!」
「あら。あなたはまともに、学園の教育ですら受けていないのかしら。普通に勉強していれば、人に聞かなくてもわかる話でしょう。」
「____?!」
王妃殿下はフランヴァート王子殿下に優しい口調で語りかけているが、その言葉に含まれるトゲは確実にフランヴァート王子殿下の心をえぐっている。その証拠に、フランヴァート王子殿下の周りには重い空気が流れ、落ち込んでいる様子がすぐに分かる。なんなら床に手までつけてしまっている。
はぁ。我ながら、情けないわぁ。元婚約者が両親のことですらまともに理解できていない人だったなんて。初等教育しか受けていない人たちでも即答するようなことなのに。それでよく学園を卒業できたわね。二人とも。
「では、フランの隣りにいるアグネス嬢は知っているのですか?」
アグネス嬢が目を泳がせているのを追う妃殿下は見逃していなかった。ある意味、アグネス嬢が王妃にふさわしいのか、王妃殿下直々に試験をしている。私は彼女が知っているとは到底思えないが。というか、公爵家ではそんな教育も施していないなんて、どれだけ、蝶よ、花よと育てられたんだろう。
「えぇーっとー、」
アグネス嬢は顔に汗をかいて、なんとかしてこの場を切り抜けようと考えているのはわかる。だけど、王妃殿下にそんなことは通用しない。フランヴァート王子殿下を見て学ばないのかしら。カップル揃って、おんなじ行動を取ろうとする上、勉強もできないとは...
身分が高くて、それ相応の教育を受けているはずなのに、宝の持ち腐れね。
「王妃殿下の身分が高いからですか?」
あっ、ヤバい。それは絶対に言ってはダメな回答だ。アグネス嬢、隣りにいるフランヴァート王子殿下の顔を見て...
フランヴァート王子殿下はこれだけは意味を理解したらしい。前にそのことを言ったことがあるのかしら。今日一番、焦っているのか、フランヴァート王子殿下の顔は汗塗れになっている。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
少しでも気に入っていただければいいねと評価欄から評価とブックマークをお願いします。




