Episode 27
「✕◯△の魔法はいつ見てもきれいで素晴らしいわ。」
誰だろう。知っているはずなのに、思い出せない。まるで記憶にかかったモヤが私を邪魔する。でも...
「そんなことないよ。みんなに教えてもらったからよ。」
勝手に口が動く。あの時と同じように誰かの記憶なのかな。誰かわからないけれど、この人たちと一緒にいるとひどく居心地がいい。
上から声がする。
「お嬢様。おはようございます。」
うーん。夢だったのか。すごく大事な夢を見ていたはずなんだけど、何だったけ。視界がまだぼやけているから、目をこすって、しっかりと脳を目覚めさせる。何か大事なことを見落としてる気がするけど、なんだったか思い出せないなぁ。
◇ ◇ ◇
今日は国王陛下と王妃殿下に謁見するために、王宮に来ている。まさか、こんな自体になるとは思ってもいなかったけど。
「この度は本当に愚息が申し訳なかった...!」
そう国王陛下がおっしゃると、国王陛下と王妃殿下が私に頭を下げる。この謁見は非公式のため、私と国王陛下並びに王妃殿下、そして最低限の側近しかいらっしゃらない。側近たちが動揺していないということは事前にすることは伝えていたのだろうけど、国王陛下と王妃殿下が私に頭を下げるなんて...婚約破棄は一概にもフランヴァート王太子殿下だけのせいではないのに。
「お二人とも、頭を上げてください。お二方が頭を下げる必要なんてありませんからっ...!」
頭を上げると、お二方の顔には申し訳なさがにじみ出ていた。
「やはり、そなたは王妃になる器を持っているのだな。今日はフランも同席させようと思ったのが...」
と国王陛下は目をそらし、顔色がますます悪くなる。たぶん、フランヴァート王太子殿下が頭が...妄言を繰り返していたのだろう。そうでもないと、あんな手紙は送りつけてこないだろう。だって、王妃教育だけでいい私が、王太子殿下が受けるはずの帝王学をフランヴァート王太子殿下と一緒に授業を受けていたんだもの。成長するにつれて、フランヴァート王太子殿下は’教育は私だけでいい’とか言い出して、すべてを私が背負ってきた。だから、フランヴァート王太子殿下の頭の中には学問の”が”の字ですら、入っていないと思われる。お二方の苦労はすごく想像できる___
「それで、ラファエラは本当に婚約破棄をするの?」
___王妃様。おやつれになさって...
これまで、王妃教育を熱心に教えてくださって、私が義娘になるのを楽しみにしてくださっていた。それなのにこんな事になってしまうなんて、面目が立たない。でも___
「申し訳ありませんが、フランヴァート王太子殿下から頂いた手紙を読んだ今となっては、あのお方と連れ添うことはできません。」
深々と頭を下げる。側近たちがざわついているけれど、誰になんと言われようとこれは変わらない。たとえ、お父さまに勘当される事になったとしても。
「そう、か。あやつがやったことを考えれば当然のことだ。しかし、手紙にはどんな内容が書いてあったのか、わしらにも見せていただけないか。」
国王陛下は頭を抱える。私が返答しようと少し前のめりになって
「今は___」
と、後方で、バンっと扉を勢いよく開けられる音がした。
「父上、母上!どうして俺を呼んでくださらなかったんですか?!」
あそこまで辱められた相手には正直会いたくはなかった。だけど、後ろを振り返るとフランヴァート王太子殿下と____アグネス様がいらっしゃった。どうして、ここに...?
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