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SWORD of C 〜 帝国の人斬り令嬢《ブルートザオガー》は心ゆくまであなたを斬りたい  作者: 無色
Episode:2

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18/70

狂愛

「というわけで、本日から第一部隊に新しい仲間が加わることになりました」

「リゼ=シュヴェールト二等兵です。よろしくお願いいたします」


 ノクトはひどく頭を悩ませた。

 突如シルベスターから第一部隊への新人の配属が届いたこともそうだが、その新人が名前を偽り、眩しい金髪を黒く染め、左目に眼帯を付けただけの皇女なのだから仕方ない。


「何の冗談でしょう」


 エリザベートはニコニコ微笑むばかりで何も返さない。

 

「ツルギ」

「辞令は下りています。彼女はおじ様の遠縁に当たる方で、予てより兵役することが決まっていました。おじ様から、くれぐれもよろしく頼むとのことです」

「承諾出来るわけがない」

「巡礼から帰って以降、レーヴェさん以外の隊長に顔見せはしていないと聞いていましたが、案外わかるものですね」

「……ああ、まあな」


 ツルギが言うとノクトは視線を逸らした。


「とにかく上からの命令なので。これからよろしくお願いします、ノクトさん」

「貴様は悩みのタネばかり舞い込ませる」

「ちょっと迷惑をかける部下の方が可愛いでしょう?」

「黙れ」

「あんまり冷遇すると可哀想ですよ。まあ入隊は茶番ですが、陛下の印璽が押された書状付きなので、大佐の一存では突っ撥ねることは出来ません。賑やかになったと喜んで受け入れるのが吉かと」

「しかし……エリザベート殿下」

「リゼとお呼びください。身分についてはどうか他言無用で。こうして直接お会いするのは初めてですね、ミューラー大佐」

「ええ。お目にかかれて光栄です。事情はわかりかねますが、これは殿下の……シュヴェールト二等兵の希望ということでよろしいのですね。そこの馬鹿者に何か無理強いされたといったことは」

「敬語も不要です。無理強いだなんてとんでもありません。ブルー様こそ私の指針。私に生を与えてくださる唯一無二。お傍に仕えることが至上の喜びです」

「……重ねて事情はわかりかねますが、であるなら言及はいたしません。一上官、一兵士として、今後よろしくお願いいたします」


 恭しく一礼するノクトを見て、ツルギはポンと手を叩いた。


「では挨拶も済んだということで。私は他の皆にリゼさんを紹介してきます。今度歓迎会をやりましょうね。ノクトさんの幹事で」

「私にそういうことは期待するな。やるなら自分たちで勝手にやれ」


 二人揃って部屋を出るときまで、ノクトがエリザベートと視線を交わすことはなかった。






 突如決まった配属であるため、しばらくの間はツルギと同室になったエリザベート。

 幸運であると言わんばかりに、彼女は部屋の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


「最年少で一等星将(アストラル)になるなんてどれほど強面の方なのでしょうと思っていましたが、優しそうな方で安心しました」

「可愛いんですよノクトさん。からかい甲斐があって」

「まあ。ブルー様にそう言わせるなんて。私嫉妬してしまいそうです」

「ご勝手にどうぞ。それはさておき」


 軍帽と外套をベッドに放り、ツルギは振り向きざまにエリザベートの首を刎ねた。


「ああっ」


 転がった頭は恍惚の表情を浮かべたが、ツルギはそのまま頭を踏みつけ頭蓋を軋ませた。


「勘違いしないでください。あなたなど眼中にありません」

「ブルー、しゃまぁ……」

「いつでも斬れるだけの肉人形に恋をしろなんて土台無理な話だと、そうは思いませんかリゼさん。あなたが私に好意を抱くのは勝手ですが、恋が実るだなんて幻想は早いうちに捨てるのをオススメします。ああ、そうすると魔術の効果が消えるのでしたか。難儀な呪いを授かりましたね。好かれもしない相手を好きになるだなんて」


 頭を軽く蹴ると、エリザベートは再生した身体でツルギの足元に這いつくばった。


「呪いだなんて滅相もありません……この力のおかげでブルー様とお近付きになれたのですから。これは運命……世界の大いなる意思に他なりません。恋が実るだなんて大層な願いです。私はブルー様のお傍にいられれば、それだけで幸せです」


 ツルギの白い脚に頬ずりし、次に義手に服の上から舌を這わせる。


「はぁ、はぁ、この命はブルー様のために。ブルー様の命令で生かしてくださいませ……。斬ってくださいませぇ……。私はぁ、ブルー様の奴隷であることを誓います……身も心も、血も純潔も……全て全て全て全て全て……あなたに捧げます……」

「気持ち悪いです」


 頰に殴打を一度。

 見えない速さで剣がエリザベートの両腕を通り過ぎる。

 しかしそれすら彼女には快感。

 極上の快楽。


「アヒャ、アヒャヒャヒャア! 気ィん持ちいいいい! 愛っ、愛しておりますぅ! ブルー様ァァァ!!」


 唾液を撒き散らして天井を仰ぐエリザベートの怪物じみた姿に苛立ち、ツルギは腹に蹴りを見舞った。

 苛立ちの理由がエリザベートの狂乱に自分を重ねたためというのを、自覚していたかどうかは定かではない。

 横たわるエリザベートの下腹部を踵で強く押しながら、ツルギは見下して言った。

 

「あなたの役目は私の小間使いです。奴隷というならせいぜい捧げてください。使えないと判断したらいつでも捨てます。それと、私の傍に在るつもりなら剣の鍛錬は欠かさないでくださいね。いくらでも斬っていい相手なんて、そういるものじゃありませんから」


 エリザベートは胃液と涙で顔と床を汚しながらもツルギへの愛を口にした。


「かしこまりました。全てブルー様の御心のままに」


 歪な関係が結ばれた三日後のこと。

 アルバートが北王国(リンドベルク)への侵攻を宣言した。

 ヤバい女がヤバい女を好きになったというだけのことです。


 この先の展開もお楽しみいただけますようにm(_ _)m


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ヤバい女がヤバい女を好きになったというだけのことです。  この先の展開もお楽しみいただけますようにm(_ _)m  高評価、ブックマーク、感想、レビューにて応援いただければ幸いですm(_ …
「あなたの役目は私の小間使いです。奴隷というならせいぜい捧げてください。使えないと判断したらいつでも捨てます。それと、私の傍に在るつもりなら剣の鍛錬は欠かさないでくださいね。いくらでも斬っていい相手な…
「アヒャ、アヒャヒャヒャア! 気ィん持ちいいいい! 愛っ、愛しておりますぅ! ブルー様ァァァ!!」  唾液を撒き散らして天井を仰ぐエリザベートの怪物じみた姿に苛立ち、ツルギは腹に蹴りを見舞った。…
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