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七本目 転生者と武器屋


彼女の名は ユイ・ナナサワ

転生者である。冒険者登録を終えた彼女は、その街で最も安いとされる武器屋を訪れるのであった。


ーーーチリン、


「こんにちは」


「いらっしゃいませ〜、とりあえず、こちらへお座り下さい!」


小さくも可愛い妖精が真っ先に視界に入った。

その妖精にカウンターの席に座るよう案内されたがその先に……


「こんにちは〜」


「!?」


目線を移した先には1人の男性が座っていた。

彼女は驚いた、異世界の男性と言うのはこれほどまでに美しいのかと……

少し赤みがかった茶髪にスッと通った鼻筋。

整った顔立とはまた別に、その身体と隣に立て掛けてある剣が闘える男という雰囲気を(かも)し出している。


「ど、どうも〜」


彼とは一つ席を開けて腰を下ろす。


「どんな武器が欲しくていらしたんですか?」


妖精が質問を投げかけてくる。彼女の店なのだろうか?


「あー、これが欲しいとかは特に決まっていなくて……相談交えながら決めようかなって……」


もしかして、迷惑だったろうか……安い店だけあってサービスのできる範囲も限られているのかもしれない。


「それなら、ウチの店主と話すのがいいですね!今連れて来るのでお待ちください!」


「え!?店主!ちょっと待って……!」


行ってしまった。

いきなり店主さんとお話しするなんて、どんな人かもわからないのに、心の準備が……逃げれることなら逃げてしまいたいが、でも、妖精さんにわざわざ呼んで来てもらっているのにこの場から逃げてもいいのか……

心で不安を呟いているとふと、隣の彼が話し始めた。


「あの、自分よくこの店に来るんですけど、ここの店主さんは優しい方なので心配しなくても大丈夫だと思いますよ」


「あ、そ、そうなんですね!」


私の不安感が彼にも伝わってしまったらしい。途端に耳が熱くなる。

それにしてもスッとフォローを入れられるところ、外面にとどまらず内面もイケメンなのか……!


「お待たせ!連れて来ましたよ〜!」


「いらっしゃい、お、レイ君も来てたのか。そして君がお客さんだね」


店の奥から一人の男性が出て来た。彼が店主なのだろうが、イメージとかなり違った。

武器屋の店主といったらガタイの良い熱い漢!か、

職人気質漂うお爺さんを予想していたが……

彼はそのどちらでも無く体型は一般的で歳はむしろ若い、たぶん20代中盤くらいだろうか。


「自分はライク・コークスと言います。この店の店主をしている者です。この子は妖精のリーナ、うちの従業員で、そこの彼はレイ・スタンス、うちの常連さんですね」


「レイ・スタンスです。レイでいいですよ」


「アタシがリーナね!」


「初めまして、ユイ・ナナサワといいます!」


一時は不安に思ったが、いい雰囲気の店のようで安心した。が、少し独特な雰囲気もする。

たぶん原因は店主さんの風貌だろう。


頭には室内なのに帽子、ズボンは黒茶で、紺のシャツ、その上に、大きなポケットが幾つも付いている黒色の鍛冶屋の前掛けを着ている。

全体的に暗い、

一際目立つのはやはりその帽子、"ワークキャップ"を被っていて、そこだけやたら現代的に感じる。

また、よくよく見るとそのワークキャップの際からは短髪の黒髪が伸びている。"日本人"そんな言葉が頭をよぎる……


「ナナサワさんですね。それで、どのような"武器(モノ)"をお求めでしょうか?」


「物としては……特に決まってはないんですけど、冒険者をするために武器が欲しくて、色々見てみたいんですけど、できれば女性でも扱い易い物がいいです」


「なるほどね。レイ君はどう思う?彼女に合う武器については」


「うーん、僕みたいな両手剣もいいと思いますけど、他の武器も安く買えますからね……」


「ちなみに予算はどれくらいありますか?」


「はい、だいたい5000モルくらいはあります」


 (補足 : 1モル=10円程度)


「……うちの武器(モノ)はだいたい買えますね。レッドスチルには行かなかったのですか?」


「あそこは値が高いと聞きましたし、5000モルでも買えない種類の武器があるとかないとかで……」


「そうでしたか、うちなら5000モルもあれば大体の武器(モノ)は買えるのでナナサワさんに合った武器(モノ)を探しましょう」


レイさんと店主さんが交互に意見を言い始める。

重さがー、リーチがー、威力がー、などなど……


「ごめんね、アイツら武器で話し始めると止まらなくて」


リーナさんが苦笑い気味に微笑んでくれた。

そうして話を大人しく座って聞いていた中、ふとあの武器の名が頭に浮かんできた。


「"(かたな)"……刀ってないのでしょうか?」


(カタナ)?……」


店主さんがレイさんとの会話を切って反応した。


「カタナねぇ……はじめてきいたなぁ、レイ君、カタナって君は聞いたことあるか」


「カタナ?僕も初めて聞きました。武器の名前なのか、種類なのか……。ナナサワさんそれってどんな物なんですか?」


どうやら2人とも刀を知らない様だ、先程、店主さんに日本人味を感じたが、刀を知らないのではきっと気のせいだったのだろう。黒髪の男性だからそう感じたのかも知れない。


「刀って言うのはですね。こう、刃が片方だけについていて、()っていて……」


刀について知ってる事を粗方話してみたが、


「見たことが無いな、そういう武器は」


「僕も知らないですね……」


そんなところで刀の話は打ち切りになった。



「にしても困ったな、希望の武器がないのでは決めようがないな……」


「ふつーに良さげな剣とかじゃダメなのかしら?」


「そんな、適当な商売していたら、店が潰れるぞ、リーナ」


「ゔ、ハイ……」


「実際に本人が持って感じてもらうのが一番なんですけどね……」


ここでライクに電流走る。


「なあ、そうだ、レイ君、確かこの間一緒に依頼を受けてみたいって言ってたよな。明日辺りに行ってみないか?」


「え?明日?」


「ほら、そこでナナサワさんも一緒に行けば、武器のお試しもできるしさ、一石二鳥というか」


「え?私もですか!?」


「ナナサワさんは明日、時間ありますか?」


「はい、あります」


「レイ君は言うまでもないな」


「仕事の時間ならいくらでもありますよ!」


「それじゃ、明日の朝、ギルド集合でいいかな?」


「ちょっと待ってよ!」


リーナが口を挟む。


「それじゃあ、明日はアタシが店主ってコト?」


「悪い、リーナ。頼めるか?」


「まっかせなさい!アンタよりいい商売してやるわ!」


思ったより乗り気だった。


こうして、転生者、ユイ・ナナサワの初めての依頼は、一人の冒険者と一人の武器屋店主と行くと言う変わった形となった。


武器を決めるって思ったより大変




その日の晩


「カタナだってさ、こんな刃どうやってつくんだよ。"親父(オヤジ)"……」


ライクはノートのスケッチにそう話す。


7話目読んで頂きありがとうございます。

次回、戦闘あります。

頑張って描写します。

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