六本目 冒険者カップルと武器屋
前回の投稿よりかなり空いてしまいました。
時間がで来たのでまた、ボチボチ投稿していきます。
コークス武装工房の朝は早い。しかし、コークス武装工房の従業員である、妖精のリーナの朝はもっと早い。
「アンタ!起きなさいよ!!お客さん来たらどうするの!!」
「ゔッ……まって、今起きるから、今起きる……」
リーナが住み込みで働くようになって数日、彼女は仕事の飲み込みが非常に早く、今では店主を叩き起こす勢いだ。
「今日、来るかな、お客さん…」
「なに寝ぼけてんの!今日も来るに決まってるじゃない!!」
この時間の太陽はそれほど眩しくはない
彼女と比べれば……
聖剣祭が終わった後、シュロは活気立っていた。
勇者が訪れたということで、観光客が殺到した。シュロの湖の美しさや酒の美味さ。育ちの良い果物に野菜や穀物類。
その中でも一際目を引くのは、勇者様の手により整地された森の跡だ。
"整地"だけに"聖地"と化している。
これらの観光客がよく引き起こす問題として、ゴミのポイ捨て問題などがある。1人が捨てると皆それを見て、同じ様にゴミを捨ててしまう。悲しい話だが、そう悪い話でもない……
なぜなら、これらの問題は"依頼"になるからだ。
ゴミなどの特定の問題が顕著に現れた場合、ギルドがその問題を解決すべく"特別依頼"を出す。今回の"ゴミ拾いクエクスト"は冒険者にとって安全で、良い小遣い稼ぎになる。
これを機に冒険者デビュー!と思う人が多かったのかコークスの店にも波が来ていた。喜ばしいことだが、ライクは一部、気に入らないことがあった。
ーーーチリン、
「こんにちは!」
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。どのような"武器"をお求めでしょうか?」
男女の2人組をカウンターへ案内する。
「あー……その、女性でも扱えるような……」
まただ……。
「はい、これ!お飲み物です!どうぞ!」
「え!妖精だ!カワイイ〜、飲み物ありがとう〜♪」
〜〜
「こちらの剣なんかどうでしょうか?重みはありますが両手で持てばそうでもないですし、お揃いにするなら、今のお二人にピッタリだと思いますよ!」
「そ、そうですかね……へへ……」
「お揃いなんて、なんかちょっと恥ずかしいけど……性別関係なく扱いやすいなら、いいですね!」
間違いない……。
「ありがとうございました!」
ーーーチリン♪チリン、
やっぱり、まただ……間違いない。
冒険者のカップルが増えている……
この国の女王様は活発なお人で十数年前、各街に公立の学校を作った。そこでは6歳からの子供が教育を受けられる。
つい、一昔前までは、冒険者は男の仕事というイメージがあったが、今では男女平等な学習環境が整ったことで、女性の中でも冒険者を目指す者が増えた。
なぜ、冒険者なのかというと、基本的に冒険者はフリーで儲けの良い職業だからだ。
一度、冒険者登録を行えば、後は自分のペースで依頼を受ければ良い。自分の食費を稼ぐ程度なら、比較的簡単な依頼を受けるだけでこと足りる。
このような状況のお陰もあり、落ちこぼれる者がほとんどいない、この治安の良い街が形成された。
冒険者という職業は、まだ経済的に不安定である若者にとって、うってつけの職業なのである。
この業界にも最近女性が増えてきた訳だが、このような業界に女が入ると男は途端に馬鹿になる。
いくら簡単な依頼でもモンスターの出てくる可能性がある以上、冒険者とは戦闘を含む職業なのだ。
その意識が足らず、薬草採取をおつかいだと思ったり、森の探索を散歩だと思ったりしているような者がいると、
さっきのカップルの様に戦場をデートスポットとか何かだと勘違いする者が出てくる。
女冒険者というのは良くも悪くも社会に対する"クスリ"という訳だ。
自ら戦場に向かうのは否定しないが、無責任な男どものせいで、向かう必要のない戦場に向かう女性が増えることはどうしても避けたい。
「フッ、お揃いの武器だってさ……リーナしばらく頼めるか?自分は工房に入って来るからさ」
「フンッ!余裕よ!それとも私を舐めてるの?見たかしら!さっきのアタシの完璧な接客を!!」
「ああ、柄にもなく、愛嬌があってよかったぞー」
「はあぁぁぁ?!」
危うくリーナにぶっ叩かれそうになった。
そこでふと気になったことがあった。
「そういや、リーナはなんでうちの店に来たんだ?」
「は?だから前も言ったじゃない、住む場所なくて困ってて……え?アンタまさか認知症?」
「どうしてそうなる……違くてうちの他にもあてにできる店だの家だのあったろうに、どうしてうちなんだ」
そうだ、住処に困っているなら武器屋に住むのは得策では無い。なぜ住処探しに来たのがこの武器屋だったのか知っておく必要がある。
「そんなの、あの森から一番近いからよ」
「……そっか」
疑念が晴れたと言うか、目のゴミが取れたような感覚だ。
「後……その、アンタあの森に夜な夜な来てたでしょ、あの深夜に何してたの?」
「……キャンプだよ、野営、野営、好きだからさ。それじゃ任せたぞ、なんかあったら呼べよー」
ライクは店の奥に入っていった。
「キャンプにしては、数なんかかぞえちゃってトレーニングみたいだったわね。元冒険者さん……」
しばらくして……
ーーーチリン♪チリン♪
「こんにちは〜」
「レイじゃないの!……アンタってもしかして休日暇なの?」
「暇って訳じゃないですけど、自分で作った休日に特にやることがないのは……そうです……」
「暇だからってこの店に来なくたって、はぁ……で、どうするアイツのこと呼んでくる?」
「いえ、店の奥で何かしてるなら邪魔になっちゃうので、呼ばなくても大丈夫です」
「分かったわ。とりあえず飲み物持ってくるわね」
リーナの身体は小さい、しかし彼女は液体の入ったグラスを器用に持ってくる。
「そういや、ライクさん、今日みたいに店の奥に入ることって多いんですか?」
「んー、お客さんが来ない時間帯とかはしょっちゅうよ、ほんとアタシ過労死しちゃうんじゃないかしら!」
「アハハ……そんな頻繁に何をしてるんですかね?」
「そうね、この間チラッと覗いたけど、ノートを広げて何か絵を描いてたわよ」
「スケッチですか……」
「ね、何考えてるのかしら……」
ーーーチリン、
「こんにちは!武器下さい!!」
「いらっしゃいませ〜、とりあえず、こちらへお座り下さい!」
若い女性の来店だ、最近増えて来ているの女性冒険者の1人だろうか……
転生者、
彼らは別の世界から強力なスキルを持ってこの世界にやってくる。勇者や英雄と呼ばれる中にも転生者はいる。
彼女もまた、その転生者の1人だ。
「ユイ・ナナサワ様でよろしいでしょうか?」
「はい!お願いします!」
新天地であるシュロで彼女は冒険者登録を済ませた。
「きちゃった!異世界!!これでゲームでしたような冒険やバトルを……んーッ!待ちきれない!!!」
ギルドから貰った地図を広げ、彼女は道を追う。
「冒険者といったらやっぱり武器!つよつよの剣士に、スタイリッシュなアーチャー!!夢が広がるけど……お金がなぁ、登録料金取られてもゴミ拾いで稼げると思ったのに、武器が無いとダメって……
安いって聞いたからここしか無いと思ったけど、こんな街の端っこの店大丈夫かなぁ……」
彼女にその地図は少し大きかったようで、地図を広がるとそれが彼女の腕いっぱいに広がる。その姿は少し滑稽だが、見方を変えれば
飛び真似をする雛鳥のようにも思える。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字等のご指摘お待ちしてますので、よろしくお願いします。