三本目 聖剣と武器屋
ヘッ……グシュン!……グシュン!!
「んぁ、……今のは2回だから噂だな。レッドスチル辺りもようやく自分のことを認知し始めたか……なんて」
ライクの店、コークス武装工房はこの頃、安定した状態にある。まだまだ新米店舗だかスタートダッシュは成功という訳だ。
だが、武器屋としては、レッドスチル武器販売が相変わらず"超"独走状態のままだ。
というのも、この状態はシュロの街に限った話ではなく、他の街でも同じである。
シュロのレッドスチルは支店に過ぎず、そのレッドスチル武器販売本店はまた別の街にある。
そこは、伝説と商売の街"イニウル"
城下町である王都から最も近い街で、王都に引けを取らぬ程の都と言っていい。王都と近いこともあってか商売が盛んで、王族、貴族向けの品から一般庶民向けの品まで、ありとあらゆる物が集まっている。
レッドスチル武器販売はそんな街の中でもトップレベルの商売屋で王国の近衛騎士にまでその武器は採用されている。
イニウルの魅力は商売だけでは無い、むしろ商売はオマケみたいなところもある。
イニウルが栄えた1番の理由はなんと言っても"伝説"の影響だ。
イニウルには古くから大きな神殿があり、そこには女神が作ったとされる"聖剣"が納めてある。
それは、ご立派な台座に刺さっていた。
その聖剣の伝説を語る書物はこのイニウルにしかない。
で、この書物を利用し、聖剣を研究し、武器作りに励んで来たのがレッドスチルという訳だ。レッドスチルの剣は聖剣に少し見た目を寄せた気品のある美しい剣である、その装飾もタダの飾りな訳でなく特殊な宝石を使っているようで、どうやら魔力を込められる魔剣というものらしい。
それが大人気になり、いまの超大手にまで成長したのだ。
「レイ君は"聖剣祭"の護衛役の為、出張か……グリップ変えただけであの急成長だからな、流石にベースの剣がヘッポコ仕様過ぎたのか……」
窓際から空に浮かぶ雲を眺める。それはわずかに動いているのが分かる。
イニウルでは年に一度"聖剣祭"と呼ばれる祭りが開かれる。その祭りは、腕の立つ冒険者を各地から集め、聖剣を抜いてもらおうという祭りだ。
伝説によると、聖剣には意思が宿っており、台座に眠る自身を引き抜く者を選ぶのだという。
聖剣に選ばれた者は勇者となり、この世に平和をもたらしてくれる……らしい……
「選ばれし者にしか抜けない聖剣……」
太陽に雲が重なり、その隙間から一筋の光が伸びている。
つまり、各地から集められた冒険者は勇者候補となり、この祭りに参加する。
しかし、今までどんな冒険者が引き抜こうとしても聖剣はうんともすんとも言わなかった。
毎年毎年、今年こそは勇者が現る!!!
と言っているが、ムード的には「ホントかなぁ……」という感じだ。
そこの曖昧な部分も合わせて聖剣祭なのである。
そんな祭りが今年も行われる。予定だったが
大体1年くらい前……
どっかの誰かが聖剣を引っこ抜きやがった。
ご立派な台座に刺さっていた……
「一体どこのどいつだよ。聞いたこともねぇぞ。
"リョウタ・ヤマザキ"って、聖剣もサビちまったんじゃねぇの。 ナンデ!?ユウシャナンデ!?」
とまあ、今年からはその引っこ抜いた奴を馬車に乗せ、晒し者にするパレードを行う様式に変わるらしい。
伝説の勇者とやらは一体いつ現れるのだろうか……
3話目を読んで頂きありがとうございます。
次回、聖剣祭です。
世界の基盤ができて来たのでストーリーにアクセルをかけられる様になりました。
誤字脱字等ありましたら、ご報告よろしくお願いします。