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アナフィラキシーショック

今回登場するアナフィラキシーショックはやっぱり怖いですね。特に治療法が確立されていない近作品の舞台の中世の場合、重篤な症状が出たときは見守ることしかできなかったのではないのでしょうか。そう思うと現代の医療の発展は本当にありがたいものだなと改めて感じさせれます。


※お断り:作者は医療や医学の専門知識を一切有していません。作中に登場する疾患の詳細・症状については可能な限り正確な描写を心がけておりますが、誤りがある可能性がございます。疾患の詳細は公的機関(厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/index.html)や国立感染症研究所(https://www.niid.go.jp/niid/ja/)など)等の信頼できる情報を参考にしてください。本作品はフィクションであり、医療行為に関する参考資料としてご利用いただけません。医療行為を受ける・行う際は、必ず医療従事者の指示に従ってください。また、作者はこの作品の疾患の詳細・症状に関する描写に一切の責任を負いません。

今、我々の前には黄色の服を着たおじさんが立っている。先ほどまで騒がしかった聴衆がどうやら皆一様に頭を下げているのだから相当位が高いようだ。

「朕は第24代皇帝朱弦である そなたらは」

新見は周りの群衆がしているのをまねて頭を下げながら答える。

「はっ 我々は日本国の医師であります」

「うむ それでなぜそなたらはここにいるのだ?」

「それが我々にもさっぱりでありまして 地震が起きたと思ったら…」

と言い切らないうちに皇帝が倒れてしまった。


「大丈夫ですか!! 新見、応援よべ!!あとストレッチャーも持ってもらってこい」

新見と宮井はすぐに駆け寄って話しかけるが

「無礼者!! 陛下に触れるな」

と周りの兵士や宦官が二人を引き離そうとする。すると宮井が

「離せ!ふざけるな!! これは彼の命に関わることなんだぞ 君たちは彼が死んでもいいのか!!」

「しかし…

「事は一刻を争うのだぞ。俺たちがすぐにでも確かな治療をすればおそらく彼は助かるのだぞ 君たちは見殺しにする気か!!」

「…わかりました 治療を認めましょう。」

「賢明な判断だな」


二人は再び皇帝に近づき治療を再開する。そこにストレッチャーと救急カートを持った応援の看護師と医師がやってきた。

早速、看護師がバイタルサインモニタを取り付ける。

「大丈夫ですか!!聞こえますか!! 新見、気道確認!!」

新見は皇帝の服を切り胸に聴診器を当てる。すると

「ゼーゼーゼーゼー」

という特徴的な音が聞こえた。


「BT36.3 BP110/70 HR 124 RR34 SpO2 94%」

と看護師がバイタルサインを読み上げていく。BTは体温、BPは血圧、HRは脈拍、RRは呼吸数、SpO2は酸素飽和度をそれぞれ示している。


この全身の発疹、呼吸器症状、宮井は即座に判断した。

「アナフィラキシーショックだな 新見、気道は大丈夫か?」

「喘鳴があるので挿管が必要と考えます」

「わかった じゃあお前はアドレナリン0.5㎎を筋注。今の時間記録しけよ。君は生食を5分で350ml静脈投与して」

と矢継ぎ早に新見と看護師に指示を出す。

「新見はアドレナリン打ったらジフェンヒドラミン50mg静注 俺は気管挿管する 新見と君手伝って」

というと朱弦に酸素マスクをつけ十分に前酸素化させる。


「SpO2は?」とバイタルサインを監視していた看護師に問う。

「97%です」

宮井は気管挿管が十分に可能と判断し新見にプロポフォール50mgとロクロニウム30mgの投与を指示する。

「十分に鎮静しているし血圧、脈拍も大丈夫だな」

というと宮井は朱弦をスニッフィングポジションにセットし、咽頭鏡・挿管チューブを用いて気管挿管を開始する。

最後にカフを膨らませ蘇生バッグで換気を継続的に行う。

宮井は胸に聴診器をあてきちんと気管挿管ができていることを確認する。


「とりあえずはこれで安心だな。俺はおつきの人に入院してもらうように説得してくるよ。あの人たちの許可が下りるまでこの人動かさないでね。」

「あ、アドレナリンはさっきの投与から5分経ったらもう一回同量を投与してね あと何か異常があったらすぐ呼んでね」


宮井が宦官たちへ近づくなり陛下は大丈夫なのか矢継ぎ早に質問された

「皆さん、一度落ち着いてください。陛下への処置は一応無事に終わりました」

「処置が終わっただと? 陛下は意識を取り戻していないじゃないか それに陛下の口に入れていたあの管はいったい何なのだね」

「まず意識についてですがじきに戻ると思います。 次に陛下の口に管を入れていた事についてですが、あれは気管挿管という処置で、陛下は呼吸がしづらくなっていたので呼吸を手伝う処置を行いました それで今後についてなのですが陛下には一度入院していただきたく思います」

「入院だと?その後ろにある建物にか?」

「はいその通りです」

「そんな得体のしれない場所に陛下を置いておけるわけがないだろうが」

「ですが今、陛下は一人で呼吸ができない状態でして、特別な機械を用いて呼吸をサポートしなければいけない状態なのです。」

「なっ そうなのか 一人で呼吸できないとは」

「ええ わかっていただけましたか?」

「しかし…」

「皆さんが付き添ってもらっても構いませんよ。それなら危険はないはずです」

「うーむ わかった我々が付き添うという条件で入院を認めよう」

「ありがとうございます」


こうして皇帝の入院が決定したのだった。



※CPA:心停止、CPR:胸骨圧迫

※前酸素化:患者の肺内の窒素を酸素に置き換えること。これにより、麻酔導入後の呼吸停止から気管挿管が完了するまでの低酸素血症の発症を遅らせることができる。

※プロポフォール:静脈麻酔薬 ロクロニウム:筋弛緩薬 静脈麻酔薬と筋弛緩薬をほぼ同時に投与して挿管する方法を迅速導入気管挿管(RSI)という。これによって視界を得やすく、嘔吐反射がなくなり、咽頭痙攣を防げるため挿管の失敗が減るというメリットがある。

※スニッフィングポジション:気管挿管時の体位。頭部全体を前屈しない範囲で前方に突き出し、下位頸椎を前屈した姿勢。

※カフ: カニューレの先端近くにある風船のことです。カフを膨らませることで気管とカニューレの隙間がなくなります。隙間がなくなることで、①誤嚥を防ぐ、②空気の漏れを防ぐ、などが期待されます。


★今日の症状解説のコーナー★

アナフィラキシー(英:anaphylaxis)とは、「アレルゲン等の侵入により、複数の臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。また、「先述したアナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」を、アナフィラキシーショックといいます。アナフィラキシーショックは血圧低下や意識障害を伴い、一刻も早く医療機関で治療しないと死亡することがあります。

代表的な症状に全身の発疹・発赤、口唇や舌の腫れや、咳、呼吸困難、ぜん鳴、頻脈(脈が早くなる)、血圧低下、意識障害などがあげられます。

原因は食物や薬剤のほか、ハチなど昆虫の毒などです。

治療にはアドレナリンの筋肉注射が有効です。


みんなもアレルギーには気を付けようね!!


※参考資料

・今井孝成 . "アドレナリン注射液とは?アナフィラキシー時の補助治療剤" . Medical Note . 2016年 . https://medicalnote.jp/contents/151117-000038-UNPGVM , (参照 2024-03-24).

・今井孝成 . "アレルギー" . Medical Note . https://medicalnote.jp/diseases/アレルギー . 2020年 . https://medicalnote.jp/diseases/アレルギー , (参照 2024-03-28).

・MSDマニュアル . “アナフィラキシー” . MSD . 2020年. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/12-免疫学;アレルギー疾患/アレルギー性,自己免疫,およびその他の過敏性疾患/アナフィラキシー , (参照 2024-03-31).

・MSDマニュアル . “気管挿管” . MSD . 2020年 . https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/21-救命医療/呼吸停止/気管挿管 , (参照 2024-03-31).

・MSDマニュアル . “バッグバルブマスク換気” . MSD . 2019年. https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/21-救命医療/基本的な気道処置/バッグバルブマスク換気 , (参照 2024-03-31).

・鈴木名規ほか . “第2回全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用・合併症、観察項目” . ナース専科 . 2021年 . https://knowledge.nurse-senka.jp/500075 , (参照 2024-03-31).

・神戸市立医療センター中央市民病院救急救命センター . 神戸中央市民ER・ICUメソッド ━診療PDFマニュアル付き . メディカ出版 , 2023年.

・DearCare . “スニッフィングポジション” . Dear Care . https://www.almediaweb.jp/glossary/0490.html , (参照 2024-03-31).

・子どもの気管切開ナビ. “カフ付きとカフなしのカニューレって何が違うの?” . 子どもの気管切開ナビ . https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/geka/navi/cat6b.html , (参照 2024-03-31).

・アレルギーポータル . "アレルギーについて アナフィラキシー" . https://allergyportal.jp/knowledge/anaphylaxis , (参照 2024-03-28).


参考資料をきちんとした書体で書くとプロっぽくてかっこいいですね。

間違ったところ等があればやさしくコメントで教えてね!!

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