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錬金術師ニコ 2

 団長室に移動し一時間ほどかけて、エイルとニコはお互いの立場と現在の状況を話し合った。結果、驚くべき事実が次々と判明する。

 セプテム城は百年以上前に作られた城塞とされていたが、その基盤を作ったのがニコだった。設計図を引くのからはじまり建設用の資材集め、工事を行うゴーレムの用意まですべてニコによるものだという。

 百年前はまだ人類大陸がソラン帝国によって制覇されておらず、各地で戦乱が耐えなかった。戦に左右されることなく落ち着いて研究したいと考えたニコは強固な城塞を作ってそこに引きこもることを考える。世界各国に相談したところ、当時独立国家だったリバート王国が建築後自国の城とすることを条件に資金と土地と建築許可を出してくれたのだという。

 ニコは城を作ることそのものも研究対象だったらしく、当時最新の城塞建築を学んでセプテム城を造り上げた。無事に引き込もれる場所を確保したニコは滞りなくリバート王国に引き渡し、城の地下で研究を始めるとあっという間に現実世界への興味を失ったのだという。

 賢者の石によって肉体を不老不死化しているニコには、食事も睡眠も必要ない。最初から世話は一切不要と言い切ったニコだったが、それでもリバート王国側は一週間に一回程度は様子を見に来ていた。しかしそれが十年、二十年と続くうちに途切れがちになり、三十年も経つ頃には誰からも忘れ去られた。

 そのうちにリバート王国はソラン帝国に攻め滅ぼされ、ニコの存在を知るものは誰もいなくなる。五十年以上もの長い間彼女はずーーっと一人地下牢で研究を続けていたのだという。その間城の上では(一昨日も含めて)戦闘が何度も行われていたわけだが地下牢まで敵がなだれ込んだりしない限り我関せずの態度だったという。

 今年五百歳を超える伝説の大錬金術師らしい、あまりにもぶっ飛んだエピソードにエイルは頭がくらくらした。いくら見た目が人間でも思考や価値観が全く違う。

 ちなみにニコ自身に言わせれば、自分は不老不死ではなく寿命が一万年くらいあるだけらしい。エイルには何が違うのかわからない。

 エイル達もまた自分たちの現状――というより窮状――についてできるだけ詳しく説明した。すでに五百年の長い時を生きている彼女からしたらありふれた戦争の一端に過ぎないかと思われたが、存外熱心に聞いてくれた。

「ふんふんふん、魔王軍がついに本格的な侵攻を開始したんだ。そらまた大変だったねえ」

「はい、それでその……」

 エイルは両脇に控えるラウラとリフィアにそれぞれ目線を送る。二人共同意するようにうなずいたのでエイルはニコへと視線を戻した。

「私達の現状は今話したとおりです。ニコさん、どうか私達に力を貸してもらえませんか? 一緒に戦ってくれとは言いません。このセプテム城を建築したニコさんの知識と技術をお借りして、城の再建をしたいんです。現在この城には城壁も残っていない状態ですから」

 百年前とはいえ、セプテム城は当時最新の城として知られていた。エイルたちパナケイア聖騎士団は普段の城の補修整備はやるものの、本格的な城塞建築は全く知識がない。そんな中ニコの存在はまさに天佑と言える。

「どうかお願いします! 報酬はちゃんと騎士団からお支払いします! 他にもニコさんの要望はできるだけ叶えますから、どうか私達を助けてください」

「な〜るほ〜どね〜」

 ニコはうんうんとうなずき、満開の笑顔になる。

「もちろん、お断りするよ!」

「ありがとうございま……えええ〜っ!!?」

 ニコの人柄から正直かなり期待していたエイルは驚きのあまりひっくり返った。


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